
シリーズ月刊高森は、元横浜ベイスターズの高森勇旗氏がここでしか読めないエピソードについて語る企画です。第3回の今回は、あの横浜ベイスターズの伝説の選手と恐れ多い焼き肉に行った時の話です。
第1回
「プロ野球選手っぽくある」ことも意外と大変。元ベイスターズ高森 勇旗が語る野球×車 秘話
第2回
「買う・乗る・語る」だけが車じゃない。高森勇旗だけが知っている助手席のエピソード
さて、今回は第3回目にして早速本題から離れ、プロ野球のこぼれ話についてご紹介したいと思います。
こぼれ話といっても、そこまで大きな話ではありませんので、どうか期待しないでください。
「プロ野球選手って、何食べてるの?」といった質問、よく受けるのですが、なんてことはありません。
焼肉を食べてます。
というのは半分冗談で、半分は本当です。野球選手はとにかく肉を食べます。驚くほど肉を食べます。
あれは僕がプロ2年目の時のこと。
2軍で山形遠征に行った際、鈴木尚典さんに焼肉に連れて行ってもらったんですね。鈴木尚典さんといえば、97年、98年と2年連続首位打者を獲得した、ベイスターズのスーパースターですね。
鈴木尚典さんについての詳しい解説はこちら
「TAKANORI」と
「TAKAMORI」。
アルファベット一文字違いということで、尚典2世と言われたこともあったような、なかったような。
話が逸れました、焼肉に行ったという話でしたね。
鈴木尚典さんといえば、とにかくよく食べるということで有名でした。そして、そんな大スターに食事に連れて行ってもらうということで、
「残すわけにはいかない」
というプレッシャーがすごかったことをよく覚えています。試合後の補給食などには一切目もくれず、極限まで空腹な状態を作り出し、夜ご飯へと向かいました。
メンバーは4人。尚典さんは一切お酒を飲まないため、食事のみの無制限一本勝負。

Photo By Jun OHWADA
まずは最初のオーダー。
「ウーロン茶4、レバ刺し4、牛刺し4、サラダ4、キムチ4」
(まだレバ刺しなどの刺身系が食べられた時代の話です)
これはプロ野球を辞めてから気付いたのですが、当時は全て人数分頼むのが常識でした。

Photo By Fumiaki Yoshimatsu
最初のオーダーでテーブルが一杯になったのもつかの間、2回目のオーダーです。
「牛タン4、ロース4、カルビ4、ハラミ4、大ライス4」
今から考えれば、最初のオーダーではまだ何も焼いてないんですよね。
テーブルが一杯にもかかわらず、まだ「焼肉」をしていない。
続々と焼かれる予定の肉達が運ばれてきますが、当然テーブルには乗らないので、座っている横に置くなどして、とにかくそのテーブルの周りは肉だらけ。網の上は肉祭り。とにかく焼きまくり、食べまくり。
ちょっと想像していただきたいのですが、これだけ食べ続けていると、休む時間がないんです。焼き続けて、食べ続けていると、顎の筋肉がパンプアップするんですね。

Photo By Norio NAKAYAMA
食べ続けているので、当然、会話はほとんどありません。ひたすら肉を喰らう4人。次々と焼かれていく肉。あっという間に肉が無くなりました。そして3回目のオーダーです。
「ホルモン4、ミノ4」
肉が終わると、内臓系です。
これ、プロ野球界では割と常識なのですが、内臓系はデザートです。いまだに癖が抜けないのですが、最後は内臓系を頼むというのがセオリーです。

Photo By ayustety
さて、内臓系も制覇。いよいよ本当のデザートにいくかと思いきや、そこは天下の尚典さんです。
ここで終わっては普通のプロ野球選手です。
「まだいけるっしょ?じゃ、カルビ4、ロース4、ハラミ4、大ライス4追加で」
2周目!?
これが噂の鈴木尚典さんの胃袋かと。もう、マラソンで言えば38キロ地点。もうろうとする意識の中、なんとか気合と根性だけで食べきりました。
「じゃあ、そろそろ締めようか。ピビンバとクッパ、どっちがいい?」
正直、どっちもいりません。が、NOとは言えない日本人。というか、憧れの鈴木尚典さんの前でNOと言う選択肢はありません。5回目のオーダーが告げられます。
「ピビンバ2、クッパ2、冷麺4」
(NO!!冷麺は頼んだ覚えない!)
とは言えるわけもなく、「締め」のメニューが到着。これは、42キロ走り終わったと思いきや、折り返し地点だったぐらいの衝撃。今振り返っても、よく食べきったな、と思うくらい。

Photo By Toshihiro Gamo
しかし!ここで終わらないのが、尚典さん。
「夜中さ、小腹空くっしょ?お土産持って帰ろう。カルビとロース4人前。あと、お持ち帰り用の容器に、ご飯詰めてきてください」
まさかの延長戦。6回目のオーダー。スーパーのお惣菜コーナーによくある、透明の容器に詰められた白米。湯気を立てておいしそうです。
そこに、熱々のカルビとロースを並べて、上からタレをかければ、特製焼肉弁当の出来上がり。ちゃんと端にキムチも添えてあります。
「じゃ、これで夜中も大丈夫だな」
と言って、一人一人に手渡してくれます。なんて優しいんだろう。

Photo By a.pasquier
そして、ついにラストオーダー。
「バニラアイス4」
終わった。ついに終わった。デザートは普通だった。よく走りきった。バニラアイスが胃袋のだいぶ上の方で溶けるのを感じながら、店を出ましたとさ。
そして翌日。前日のお礼をしに、尚典さんの元へ。
「昨日はごちそうさまでした。また、ぜひ連れて行ってください!」
とお礼をいう側から、違う先輩が、
「尚典さん、昨日はラーメンごちそうさまでした。美味しかったですね!」

Photo By Sig.
ラーメン?
俺がご馳走になったのは焼肉のはず。
そう、尚典さんは夜中に、また違う選手とラーメンを食べに行っていたんですね。さすがはプロ野球界でも大食漢で名を馳せる鈴木尚典。やはりあれくらい食べないと2年連続首位打者にはなれないということですね。
毎日、何万人という観客の前で試合をして、全国を移動しながら1年間試合をし続けるプロ野球選手という職業。「食べる」ということも、仕事の一つと言えますね。
| ラウンド | 内訳 | 合計kcal |
|---|---|---|
| 1 | レバ刺し 牛刺し サラダ キムチ |
979karory |
| 2 | 牛タン ロース カルビ ハラミ 大ライス |
1,954kcal |
| 3 | ホルモン ミノ |
334karory |
| 4 | カルビ ロース ハラミ 大ライス |
1,666kcal |
| 5 | ピビンバ クッパ 冷麺 |
1,448kcal |
| 6(お持ち帰り用) | カルビ ロース ライス |
1,283kcal |
| 7 | バニラアイス | 145kcal |
| 合計 | 7,574kcal | |

Top Photo By Alpha/_BuBBy_/Steven Depolo/Dèsirèe Tonus
鈴木 尚典(すずき たかのり、1972年4月10日 – )は、静岡県浜松市出身の元プロ野球選手(外野手)。 現役時代は横浜で2年連続して首位打者に輝くなど、アベレージヒッターとして活躍した。
横浜の生え抜きの野手としては初めての1億円プレイヤーとなる。
Wikipediaより