バブルの栄光をもう一度! 時代の流れに負けた名車 オートザムAZ-1

バブルの栄光をもう一度! 時代の流れに負けた名車 オートザムAZ-1
     
   

近年好調な売上を見せる軽自動車。各社から燃費の良いエコ志向な軽自動車が発売される中、2014年にはダイハツから2代目「コペン」、2015年にはホンダから「S660」といった2シーターの軽スポーツカーにも注目が集まっています。

しかし、軽スポーツカーを語る上では外せない「平成ABCトリオ」と呼ばれる3台をご存知でしょうか。今回はその中からイタリアンスーパーカーのような軽自動車、マツダ・オートザムAZ-1をご紹介します。

マツダ・オートザムAZ-1とは?

AZ-1photo by マツダ株式会社

80年代末期から90年代初頭のバブル経済の波に乗って作られたホンダ「ビート」、スズキ「カプチーノ」と並び、「平成ABCトリオ」の中では最も早くから設計されていたにも関わらず、最も遅く発売された「AZ-1」。発売された時にはバブル経済は崩壊し、ライバルの「ビート」「カプチーノ」よりも高価だったことから販売台数も4400台弱と伸び悩み、1年で生産を打ち切られてしまいました。

世間ではややキワモノとして見られていたこの「AZ-1」ですが、近年の「コペン」や「S660」の発売もあり、軽スポーツカー人気の高まりで「ビート」「カプチーノ」と共に再評価され、台数も少ないことから中古車価格が高騰しています。業者間での価格は最低60万円、状態がいいと150万円超というまさにモンスター軽自動車!人気の高いマツダ・スピードバージョンやM2-1015モデルはさらに高い値段が付いています。また人気車種ではないものの、経年劣化や事故廃車などで現存数が減っているため、その価格は現在でも緩やかに上昇している傾向にあるようです。

まるでスーパーカー!ガルウィングドアの理由とは

AZ-1を特徴付ける最も大きな点は、やはり国産車唯一のガルウィングドアです。トヨタ「セラ」もドアが上に開く構造ですが、あちらはバーティカルドアと呼ばれるものです。これは格好やインパクトのためではなく、あくまで走行性能向上のために選ばれました。

空気抵抗を極限まで抑えるために徹底的に全高を削るため、一般的な板の上に梁を配置するプラットフォーム型シャーシではなく、板の上に外枠となるフレームを配置するペリメータ型シャーシという構造が採用されました。

しかしペリメータ型を採用して低車高化する場合、開口部が小さいため乗り降りに問題が生じます。この問題を解決するために、AZ-1では屋根に強力なダンパーを装備したガルウィングドアを採用したのです。

超軽量化はそのボディにまで

AZ-1では軽量化のためにペリメータ型シャーシにスケルトンモノコックと呼ばれる頑丈なフレームを採用し、外装を全てFRP製パネルにしてくっつけるボディ構造を取っています。そのため、外装をすべて取り外したシャーシのみでも走行が可能なほど丈夫です。

一般的なシャーシでは強度を確保するために多くの「梁」を使う必要があるため、重量が嵩む上、車が厚くなってしまうことから、AZ-1では強度と重量、そして車体の薄さのバランスを取るためにペリメータ型を採用しました。

また、この構造のお陰で純正の外装パネルを外して自作のものに取り替えるなど、プラモデルのようにカスタマイズすることも可能となっています。

本当に軽自動車!?パワフルなターボエンジン!

AZ-1はエンジンを座席後方に搭載するMR車です。エンジンはF6A型インタークーラーターボ付3気筒エンジンで、ライバルのスズキ・カプチーノやアルトワークスに搭載されたものと同様の、軽自動車としては最もパワフルなエンジンです。

このエンジンはカタログ上、軽自動車の自主規制枠一杯の64馬力であり、スポーツカーとしては非力なエンジンです。しかし低速トルクが太い上に、加速を行うリアタイヤにしっかりと荷重がかかるので、停止状態からの加速は非常に鋭いものになっています。また、メーター上の最高速度は140キロですが、空力の良さも手伝って180キロまで出せるようです。

究極のハンドリングマシンは実際どんな車なのか

車体中央に最も重たいエンジンを載せることで前後の重量バランスを44:56とし、ロックトゥロック2.2というステアリングのクイックさも相まって、車線変更や交差点でのコーナリングではレーシングカーの如く飛ぶように方向を変えます。ただ、フロントの接地圧不足からか、100キロを超えるような高速域ではやや直進性に問題があり、低速でも落ち葉の吹き溜まりに入るとたちまちフラついてしまうほど。直進安定性を犠牲にコーナリング性能を重視しているのは言うまでもありませんが、しっかりと整備をすれば世間で言われているほど直進安定性は低くなく、むしろ直進性と回頭性が高いレベルでバランスが取れています。

またABCトリオの中でも最も車高も低く、その視線の低さから町中を40キロで走っていても、後方から響く大きなエンジン音と相まって、とても速く感じます。パワーの低さ故に速度が出ない分、どこでも安全にスピード感が得られると言っても過言ではないでしょう。ブローオフバルブを取り付けておけば、アクセルを緩めた時の甲高い排気音が癖になること間違いなしです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。軽スポーツカーを語る上で外せない一台であるAZ-1。軽自動車故に維持費が安く、燃費も18キロと悪くない性能。電子制御によるアシストや快適性は一切ありませんが、走る楽しみのために全てを割り切った純スポーツカーとして、今後も自動車史に名を残す一台です。

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