ラオスで話題の中古車オークションを仕掛ける「LAOCAM」社とは【前編】

     
   

日本から約4000㎞離れた東南アジアの内陸国、ラオス人民民主主義共和国。近年、道路やインターネットが整備され、目覚ましい発展を遂げています。その中でも現在注目を集めているのが、中古車オークションの運営をする日系企業「LAOCAM」社です。

なぜ、ラオスで日系企業が活躍しているのでしょうか。取材を行っていくうちにその成功の秘訣が見えてきました。

ラオスで活躍する日系企業――起業の経緯とは

「元々、昔から車にフォーカスしたビジネスをしたいという思いがありました」と語るのはLAOCAM社の代表、大橋賢治氏。

大学時代から中古車販売ビジネスを立ち上げていた大橋氏は中退後、当時はまだ珍しかったインターネットベンチャーの世界へ。その後、イタリア・ミラノへ渡り、輸入代理店を起業するなど、さまざまなビジネスを通じて自身のキャリアを積み重ねていきました。

「2006年からようやく自分が本当にやりたかった中古車販売ビジネスを再開し、自動車の個人売買の普及を進めてきました。しかし日本では、中古車は中古車販売店で買うのが普通。個人売買にはどうしても限界を感じていました。そんな折、ラオスにいた友人から助言をもらい、この国で中古車販売ビジネスをやろうと決意しました。」

2015年、大橋氏はラオスでLAOCAM社を設立。ラオス国内初となる中古車オークションを開催し、イベントの運営に努めてきました。

ラオスでビジネスを立ち上げた理由の1つとして、ラオス経済が急速に発展したことによる弊害も関係していました。道路の整備による車の増加にともない、交通事故が多発。そのためラオス政府は2012年6月、事故を抑止する目的でラオス国内への中古車の輸入を禁止する措置をとったのです。

「隣国のタイやミャンマーなどと比べても新車の数が非常に多いのは特徴ですね」と大橋氏。しかし、法律が施行されて数年が経過した現在、輸入規制も解除される見込みが強まってきています。中古車需要の高まりが追い風となる中で、大橋氏はいち早く中古車オークションの導入へと踏み切ったのです。

ラオスで中古車オークションが成功する2つの要因

ではなぜ「中古車オークション」が成功を収めたのでしょうか。それは2つの国内事情が関係していました。

まず1つ目に、ラオス国民特有の中古車購入への安心感が挙げられます。

「ラオスでは中古車販売店での値段と個人売買の値段がたとえ一緒でも、個人から購入したいという人が大半です。その理由として、メーターの巻き戻しや事故車の再販といったような悪徳業者にだまされる不安が大きいからでしょう」

ラオスは日本と比べて、まだ法整備が十分に整っていません。そのため、専門的な技術や知識を持った業者から車を買うよりも、昨日まで誰かが乗っていた車をそのまま譲り受ける方が安心できるというのがラオス国民の考え方です。ラオスの街中には、メモ書きが貼られた車があります。このメモに書かれた電話番号に電話をかけると車の持ち主と直接売買ができるのです。そんなラオスの人々にとって中古車オークションは、安心して中古車のやり取りができる都合の良い場であるといえるでしょう。

2つ目に、ラオス国民の所得、家族形態などの事情があります。

ラオス国内でも富裕層はフェラーリやベンツといった高級車を新車で購入するため、オークションの主な利用者は中流層が中心なのだと大橋氏は言います。彼らの平均月収は約200ドル(約2万円)から300ドル(約3万1000円)。それに比べて、トヨタの新車の相場は、約4万ドル(約416万円)。決して安い買い物ではありません。新車より安価に購入できる中古車に需要があることは当然といえます。

またラオスでは日本と違い、国民の持ち家率が90%を超えています。これもまた中古車の需要を高めている要因です。ラオスの人々は、家や土地にあまりお金を使いません。そのため日本人が家族を抱えてマイホームを購入する感覚と同じように、ラオスでは自動車購入に対してお金を使います。

LAOCAM社では、これらラオス国民のニーズを先取りして、ここ1年で5回もの中古車オークションの開催につなげています。

ではラオス国内でのオークションの評判、LAOCAMの認知はどうでしょうか。後編では、ラオス国内におけるクルマ事情から、LAOCAM大橋氏が描く今後の展望について迫りたいと思います。

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