11月22日にビッグマイナーチェンジが行われた、トヨタ・マークX。同社を代表するミドルFRセダンとして有名ですが、実は前身はコロナの派生車種であるマークⅡだったことはご存知でしょうか?ここでは、そんなマークⅡからの歴史を振り返りつつ、現行型マークXの魅力にも迫っていきたいと思います。今ではスポーツセダンとしてすっかり定着した感のあるこのクルマ、一体どんな歴史があるのでしょうか。
ピックアップも用意されていた初代
急速に増加していった自動車需要や自動車に個性を求める声に対応すべく、トヨタが1968年に発売を開始したクルマが初代マークⅡです。このマークⅡの登場により、従来「ゴールデンシリーズ」として販売されていた1.6リッター系のコロナシリーズ(ハードトップ、ピックアップトラック)がマークⅡへと移行します。
「コロナから生まれた理想のコロナ」が当時のキャッチフレーズで、4ドアセダンや2ドアハードトップ、ワゴン、バン、そしてピックアップという実に多彩なラインナップを誇っていたのも特徴でした。1969年には、スポーツグレードである「GSS」が追加されています。
シリーズ初の6気筒を搭載した2代目
2代目は車両型式コードが変わり、初めてコロナとは独立したプラットフォームが与えられました。これにより、コロナの名前は車体から外されることになります(カタログなどには、5代目までコロナの名前は残っていました)。
当時スポーツセダンとして頂点に君臨していた日産・スカイラインの牙城を崩すべく、上級車種のクラウンから流用した6気筒エンジンを搭載。ゆとりのある走りが魅力のクルマでした。一方、スポーツグレードのGSSも展開されますが、オイルショックの影響から1975年に販売が終了されます。なおこのGSSは、特撮「ウルトラマンA」の劇中車「タックパンサー」として活躍したことでも有名です。
現在も旧車マニアに人気の高い3代目
1976年、3代目となったマークⅡは、これまでのデザインとは大きく異なるアメリカンなスタイルを手に入れます。これは当時のアメリカ車の主流であった「ヨーロッパ調セミクラシック」というテイストを取り入れたためで、この代から「クレシーダ」として輸出するという事情もあったからと考えるのが妥当でしょう。このデザインは「ブタ目」と巷では呼ばれ、現在も旧車のイベントなどでは高い人気を誇っています。また上級グレードには、トヨタ2000GT以来となる4輪独立懸架、四輪ディスクブレーキが奢られ高性能をアピールしました。ちなみに派生車種である「チェイサー」が登場したのは、この代からです。
スタイリッシュになった4代目
1980年に登場した4代目では2ドアが廃止され、4ドアハードトップと4ドアセダンというラインナップになりました。直線基調のデザインへと大きく変化し、時代の要請から2リッター6気筒ターボモデルもこの代より登場しています。
ラグジュアリー色を強く打ち出したのが特徴ですが、その一方で前期型のみ直列4気筒エンジンを搭載するスポーツグレード「GT」もラインナップされていました。またビスタ店からは派生車種「クレスタ」が誕生し、チェイサーとともに「マークⅡ3兄弟」と呼ばれるようになったのもこの頃からです。
ハイソカーの旗振り役となった5代目
「美しき正統」というキャッチコピーで1984年に登場した4代目は、ようやくコロナの名が外れて独立した車種となりました。高級感がありながらもハイパワー化にも手を抜くことがなく、1985年には日本初のツインカム・ツインターボ車「GT-TWINTURBO」が追加されています。またスーパーホワイト外装+ワインレッド内装という組み合わせが受け、当時のハイソカーブームの立役者となったのもこの代です。
着実な進化を果たした6代目
5代目の好調なセールスを受け、キープコンセプトで開発されたのが6代目です。全高の低いデザインはスタイリッシュで、クーペのようなフォルムを持っていました。3ナンバー車も7年ぶりに復活し、大排気量NA(自然吸気)、スーパーチャージャー搭載車という充実したエンジンバリエーションを誇ったのも、この代の特徴です。後期型では2.5リッターツインターボエンジンが登場。最後期には「ヤマハコンセプト」というスポーツモデルも存在しました。一方セダンは教習車として人気が高く、その堅牢な造りから後の「コンフォート」のベース車となっています。
多くのユーザーを獲得した7代目
1992年、マークⅡは7代目へと進化します。ボディを拡大し、全車3ナンバー化されたのが一番のトピックといえるでしょう。バブル崩壊後の発売ということもあり、至るところにコストダウンの跡が見られますが販売は概ね堅調といえるものでした。クルマのキャラクターをはっきりと分けたのもこの代の特徴で、高級志向のグレードは「グランデ」、スポーツグレードは「ツアラー」を名乗りました。またシリーズ初の4WD車も設定され、降雪地帯のユーザーから絶大なる支持を受けたのです。
セダンイノベーション、8代目
バブル崩壊の影響は8代目開発時も依然続いており、8代目は7代目のプラットフォームをキャリーオーバーすることでコストダウンを図ったモデルです。とはいえ独自の進化を果たすことにも成功し、特に安全面での強化が図られました。居住性の面でも改善がなされ、後席のスペースが広く取られているのが特徴です。この代もグランデとツアラーの棲み分けがはっきりとしており、とりわけツアラー系は現在でもドリフト競技マシンのベースとして高い人気を誇っています。「セダンイノベーション」という触れ込みで登場した8代目ですが、折しも時はミニバンブーム。この勢いに押され、販売面では苦戦を強いられました。
最後のマークⅡ、9代目
9代目はこれまでと大きく変わり、セダンボディとなりました。車台は当時のクラウンと共通になり、安全性や居住性にさらに力が入ったモデルとなります。しかし市場ではミニバン優勢という流れは変わらず、この代も販売で苦しみました。この代ではグレード名がすべて「グランデ」に統一され、3リッターモデルが廃止されます。特別仕様車の投入などのテコ入れを行いますが、状況は好転せず、最後のマークⅡとなってしまいます。
スポーツセダンへの回帰。マークX登場
それまでの高級路線を断ち切り、スポーツセダンへと原点回帰したのがマークXです。2004年に登場した初代は、低いプロポーションと四隅にタイヤが張り出したスタイリングが特徴で、低重心化を図り運動性能を飛躍的に向上させました。シンボル的存在であった直列6気筒エンジンに別れを告げ、新たにV型6気筒エンジンを採用したことも大きな話題となります。ターボ搭載車などはラインナップされませんでしたが、豊かな低速トルクを誇るNAエンジンとシャシーのマッチングの良さは高い評価を受け、セダン復権に貢献しました。
さらに走りを磨き上げた2代目マークX
2009年、マークXは2代目へとモデルチェンジを果たします。より大胆に、よりスタイリッシュなエクステリアへと進化し、走りの面でも「G’s」「GRMN」などワークスチューンを施したモデルが次々と生み出されていきました。
そして2016年。マークXは大規模なマイナーチェンジを受けます。さらにワイド感を強調したフロントマスク、スポット増し打ちや構造用接着剤を用いたボディ剛性の強化などが主な変更点となります。そしてもうひとつ大きなニュースは、衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」が全車に標準装備されたことでしょう。これにより、現代のセダンに求められているすべての性能を満たしたことになります。新グレード「RDS」も用意されるなど、スポーティさをさらに向上させた魅力的な大人のスポーツセダンとして今後注目の存在です。
華麗なる復活を遂げた、トヨタ・マークXの魅力
セダン優勢であった80年代とは違い、ミニバンの台頭によりセダンが売れない時代が長く続いています。しかし、セダンの本質である「優れたパッケージング」「高い運動性能」を持つクルマはきちんと生き残っています。マークXは、このセダンの本質に忠実につくられている点が最大の魅力といえるでしょう。そしてやはり、国内では数少ないミドルサイズのFRセダンというところもユーザーの食指が動く理由といえるかもしれませんね。
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