モータリゼーションによる自動車の普及からはや50余年が経った現在ですが、その長い歴史の中には、不運にも時代に愛されなかったクルマたちの姿がありました。
その理由は様々ですが、今振り返ってみれば時代を先取りしすぎたクルマや、ユーザーの志向とはやや斜め上の発想を持ったクルマなど、たくさんの不思議なクルマたちの存在があり、今日の車社会が支えられているのです。
今回はそんな名車の誕生を支えた陰の立役者、愛すべき迷車たちとその販売台数に焦点を当てて、その姿に迫ってみようと思います!
三菱・ディグニティ
2016年9月、販売終了時での年間販売台数、10台
三菱・ディグニティは日産自動車のOEM生産で販売されていた三菱自動車の最高級車です。
初代はリムジン仕様としての販売を開始しました。発売当時の価格は999万円からと最高級車としてふさわしい値段設定となっています。
V8、4500ccという圧倒的大排気量エンジンでショウファードリブンカーとして三菱グループの重役専用車や秋篠宮家の公用車として宮内庁に納入されました。
ただし、それ以外の受注はほぼ皆無であったためか、現在でもほとんど見ることのないレア車となっています。
また、2代目ではシーマのOEMとしてフルモデルチェンジをしましたが、これもまた販売は振るわず2016年9月には惜しまれることもなく販売を終了しました。
いすゞ・ビークロス
国内累計総販売台数、1600台
映画「ミッション・トゥ・マーズ」やウルトラマンシリーズにも登場した迷車、ビークロスは、いすゞ自動車が販売していたスペシャルティカー・クロスオーバーSUVです。その独特で近未来的なルックスと変態的でマニアックな仕様で一部の国内外のマニアからの圧倒的な支持を受けました。
筆者も数回街で見かけたことがありますが、現代においてもその特異なデザインは未来へタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができます。
見かけたら嬉しくなるクルマNo.1、二度見してしまうクルマNo.1の名を欲しいままにする憎い奴です。
スズキ・キザシ
2015年12月時点での国内販売台数、約3300台
こちらは覆面パトカーでおなじみ、スズキのキザシです。
国内での販売の4分の1がパトカーとしての登録という話がありますが、むしろ4分の3が一般の車としての登録とは皆様も驚かれたのではないでしょうか。
しかし、キザシ自体は非常に良いクルマで、キザシ=覆面パトカーとのイメージが先行したため、覆面パトカーと覆面パトカーとして見られたい車の二極化が起きてしまいました。悲運のクルマではありますが、2400ccの排気量とミドルサイズのセダンとしては丁度良いポイントを押さえ、扱いやすいクルマとして定評があります。
ただし、やはり一般の販売は振るうことなく警察関係者やマニアから惜しまれつつも2015年12月末に惜しまれつつも国内販売をひっそりと終了しています。
ホンダ・エレメント
ホンダ・エレメントは今までご紹介した車種に比べると比較的販売台数も多い車種にはなりますが、そのプロポーションの特異さから今回こちらに挙げさせていただきました。いすゞ・ビークロスに通じるような奇妙なルックスは、やはり今見てもかなり目立ちます。
販売台数が比較的多いといっても、街で見かけることはあまりない車種でもあります。
全体的に樹脂の多い野性的なルックスと、SUVとミニバンの中間のデザインは、現代の3列シートSUVの流行を予見するものでありました。
しかし、時代が車に追いついていなかったため、残念ながら国内版は2005年にその生産を終了しています。意外に使い勝手もよく、車中泊にはぴったりの車で、中古車相場もお手頃のため、筆者お勧めの一台です。
アストンマーティン・シグネット
総販売台数、約150台
アストンマーティン・シグネットは、なんとトヨタ・IQをベースにイギリスの超高級自動車メーカー、アストンマーティンが販売したコンパクトカーです。アストンマーティンといえば、映画「009」シリーズのジェームズボンドが乗るボンドカーとして有名ですね。
そしてそんなアストンマーティンがトヨタのIQをベースとした車を作ろうとしたきっかけは、ニュルブルクリンクでトヨタ自動車の当時副社長であった豊田章男氏とアストンのCEOのベッツ氏が意気投合したことがきっかけだといいます。まさに車好き同士の邂逅が生んだ奇跡の一台なのです。
価格は400万円台からと、IQとしては高い価格ですが、アストンマーティンに400万円だいからのれるとすればとても安くも感じられるのではないでしょうか。
ちなみに、IQの完成車をイギリスで分解した後再度カスタマイズしているそうで、恐ろしく手間のかかった一台となっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今日の車社会の裏には、日の目を浴びることのなかった名車や迷車の存在があります。
しかしそれは、当時は売れなかったとしても、現在の自動車のテクノロジーやノウハウに、きっと役立っているはずです。
皆様もそんな迷車たちを目にする機会があれば、そのクルマの歴史に思いをはせてみてはいかがでしょうか。