本田技研工業株式会社の研究開発子会社である株式会社本田技術研究所といすゞ自動車株式会社は、燃料電池(FC)をパワートレインに採用した大型トラックの共同研究契約を2020年初めに締結しました。
いすゞの大型トラック技術とHondaのFC技術と融合・推進して、それぞれが長年培った強みを生かすことでFCパワートレインシステムや車両制御などの基礎技術構築を目指した共同研究といえます。
いすゞとHondaは、ユーザーに求められるクリーンで低騒音、低振動な大型トラックを実現したいという想いがあります。また現在日本ではインフラ整備やコスト面での課題も多く、こういった課題に立ち向かうための共同開発でもあるようです。ここでは、両社の技術などをご紹介していきます。
燃料電池(FC)って、そもそもどんな電池?
引用:https://www.honda.co.jp/tech/auto/CLARITY/
燃料電池(FC)とは、これまでのエネルギー生成とはまったく異なったシステムです。「水素」と空気中の「酸素」を反応させて電気を起こすことで画期的な発電ができるシステムです。
FCは、化石燃料のように有害物質を全く排出することがなくエネルギー効率も高いため、地球の環境問題やエネルギー問題を解決する方法として世界的に開発が進められています。
燃料電池(FC)の特徴
水素を燃やすのではなく酸素との化学反応によって、電気を直接生成(取り出す)ことで二酸化炭素(CO2)などの有害な排出物がなくなります。排出されるのは、水のみなのでとてもクリーンなシステムです。
高いエネルギー効率
水素の持つエネルギーの約83%を電気エネルギーに変えることができるようになります。ガソリンエンジンの最高効率が40%前後なので、燃料電池(FC)は、普及すればとても環境にやさしく効率的であるといえます。
いすゞ自動車株式会社ってどんな会社?
引用:https://www.isuzu.co.jp/index.html
いすゞは、1916年に創業の老舗トラックメーカーです。大型・中型・小型トラック、バスなどの製造をおこなっています。中でもディーゼルエンジン、産業用ディーゼルエンジンは、国内製造を主体に行っている会社です。
企業理念は、「運ぶことを支えることで、信頼されるパートナーとなり、豊かな社会に貢献していく」となっています。いすゞは、輸送トラックなどをメインに日本や日本の企業を支えるメーカーですね。
さらにいすゞは、世界にも進出している企業です。昨今欧州などでは、環境に配慮した新規格トラックの設計が急務になってきています。
いすゞは、現在でもコモンレールエンジンなどによって環境配慮を行ったエンジンの製造開発を進めています。しかしながら化石燃料を使用したパワートレインだけでは、有害物質排出ゼロは難しいのが現状です。
そこでホンダの永年培ってきた燃料電池(FC)技術と融合し開発することで、有害排出物ゼロに向けた取り組みをスタートさせたいという想いがあるのでしょう。
ホンダの市販燃料電池(FC)モデル「クラリティ」
引用:https://www.honda.co.jp/CLARITYFUELCELL/
ホンダでは、乗用車の燃料電池(FC)モデルの取り扱いが既に行われています。同社は、1996年から水素燃料の研究をスタートしてプロトタイプなどの開発を行い、2008年には、初代クラリティFCXをリースしています。2016年には現行型クラリティFCVが登場し試験運用されています。
これからのFCVの課題としては、水素を燃料にするためのスタンド機能が不足していることです。こういったインフラ整備が全国的に進むことで、販売数量も増え販売価格も下がっていくのではないでしょうか。
ホンダといすゞの技術集合で未来を明るく
ホンダは、今までに培ったFC技術をトラックの分野でも利用できるように改良・応用し搭載できるユニットに仕上げることが目標でしょう。
いすゞは、現在日本の道路物流を担っている1メーカーです。環境負荷を低減し、ユーザーにより喜ばれるトラック等の開発のため、FCパワートレインが搭載できるプラットフォームの開発を行っていくことが目標でしょう。
両社は、新車両を完成させ普及させるために、FC航続距離に合わせたインフラ整備を進めていくことも重要であると捉えています。
まとめ
ホンダが、いすゞと燃料電池(FC)で共同研究!をまとめると
- ホンダのFC技術といすゞのトラック分野の技術を融合して新しいトラックを設計したい
- ホンダは、FC技術を改良しながらトラックに搭載させるユニットに完成させる
- いすゞは、トラックにFCユニットが搭載できるようにプラットフォームを開発
- 課題は、トラック完成と合わせてインフラ整備が必要である点
ホンダといすゞは、実は自動車部門で1990年代OEM供給を相互に行ったりしていました。たとえばアコード→アスカ、ドマーニ→ジェミニ、いすゞからは、ビッグホーンがホンダへ。
実に20年ぶりに共同開発として復活したといえます。今回は、OEMではなく未来に向けたトラックの共同開発の今後の行方が楽しみです。