前回までのあらすじ
板を叩きました。
そして、引っ張りました。
前回までのおさらい…鈑金とは
・叩く【前編】
・引張る【中編】
・溶接する【後編】
の3種類があり、最終回の今回は3つ目の「溶接する」編です。
今回取材させていただいたのは関東最大級の自動車修理・鈑金工場である京南オートサービスの鈑金チームの方々。都内にたったの2社しか導入していないスポット溶接機がある最先端の工場です。
| 公式サイト |
京南オートサービス |
| 住所 |
〒206-0024
東京都多摩市諏訪6-3-1 |
| 営業時間 |
9:00～19:00
※日曜日はフロントのみ10:00～17:00 |
| 電話番号 |
042-311-2600 |
さて、いよいよ今回は溶接についておうかがいします。
溶接というと、たぶんこういうイメージがあると思うのですが、
Photo By Official U.S. Navy Page
私たちの工場には、大きく分けて2種類の溶接機があります
1つが、ガスタイプ。
もう1つが、電気タイプです。
この2つはどう違うんですか？
ガスタイプでの溶接
一般的な溶接のイメージに近いのがガスタイプの溶接です。せっかくなんで近くで見てみますか？
はい！ぜひ！
ではここからは私が全力でリポートさせていただきます！
あーはい、それ以上近づくと燃えるので注意して下さい。
はい。
あと、直接光を見ると目が焼けて視力が落ちますので注意して下さい。
あ、私、目がないので大丈夫です。
あーはい。
ではいきますよ。
みなさん！ものすごい光です。
そして全身が燃え上がりそうなくらい熱いです！
人生初のリポートですが、
これがもしかすると最後の現場になるかもしれません。
ですが、私は満足です。
この、知られざる鈑金の現場に立ち
皆様にこの、職人の方々の素晴らしさを伝えることができて
私は満足…
終わりましたよ。
え…あ、はい。
電気タイプでの溶接
ガスタイプの溶接の特徴は線での溶接ができることです。
一方、電気タイプの溶接機は溶接する部分を挟み、点の溶接をします。
こうですね。
ちなみにアタッチメントを付け替えれば、より様々なものを溶接することができるようになります。
スポット溶接機を使ってみた
では実際にスポット溶接をしてみましょうか。
え、いいんですか？
はい、これは最新型なので簡単ですよ。
まず、電圧や電気を流す時間が車種ごとに異なるので設定をします。
え、そんなの知らないんですが…
大丈夫です、専用のバーコードを読みこめば全て自動でセッティングしてくれます。
ハイテクだ…
そして、スイッチを1回押して溶接したい箇所をはさみます。
挟んだらもう一度スイッチを、今度はブザーが鳴るまで押します。
ポチッとな。
ん？終わった…？
はい、溶接ができましたね。
なんて簡単な！！
気になるお値段は…
このスポット溶接機の値段は正確にはお教えできませんが、良い新車が1台買えるくらいでしたね。
高いですね…。
そうですね。
これを導入したことで私たちのボーナスが吹っ飛びました。
ご愁傷さまです。
Photo By The U.S. Army
鈑金チームがボーナスを犠牲にしてまでも新型溶接機を導入したかった訳
ここからはぜひ記事化してほしい私たち鈑金チームの美談が始まるのですが、
あーはい。
実は、この最新のスポット溶接機を導入してほしいと社長にお願いしたのは私たち鈑金チームなんです。
そんな…なぜですか!?
実は、古いタイプの電気溶接機ではもう最新の自動車は修理できなくなりつつあるんです。
え、そうなんですか？
最近、観音開きの自動車などが登場していますね。
Photo By BMW公式サイト
これは一昔前までは、鉄板の強度の問題で無理だったことなんです。
しかし、高張力鋼板（こうちょうりょくこうはん）と呼ばれる、最新の軽くて頑丈な鉄板の登場で実現できるようになりました。
すばらしいですね！
しかし、この最新の高張力鋼板を溶接するには、特殊な溶接条件が必要なんです。
それが、最新型でしか出すことができない、と？
その通り。
もし、古いタイプの電気溶接機で溶接するとどうなるんですか？
最悪の場合、走行中にスポット溶接の部分が外れます。
あぁ…。
最新型のスポット溶接機が都内に2台しか導入されていない理由
こちらの最新型の溶接機、導入している工場は都内で2箇所だけとお聞きしましたが、
そうなんです。
もう1箇所は有名自動車メーカーの工場と聞いています。
なぜなのでしょうか？
1つは値段ですね。正直、私一人のボーナスを犠牲にしただけでは買えませんから。
なるほど、鈑金チームの尊い犠牲の上に成り立っているんですね。
はい（涙）
そして2つ目は、電圧の問題です。
電圧？
最新型は普通の電圧よりも高い電圧を必要とするので、専用の制御盤を設置する必要があります。
もしかして、そのために給料を減らされたり…
幸運なことにこの工場を立替た時に、
将来的により高い電圧が必要になることを見越して設計
されていたのでお給料の方は無事です。
先見の明ってやつですね！
まとめ
知られざる自動車修理の現場、今回は鈑金についてリポートしてきました。ここには書ききれないお話を鈑金チームのみなさんに教えていただきましたが、その中でも特にこの言葉が印象的でした。
いろいろと手間がかかって大変な作業が多い鈑金だけど、お客さんの手元に戻った時に、
「
どこが壊れていたかわかんない」
っていう風にしてこそ一流だと思うんだ。
そのためには、
手間をおしんじゃいけないし、
設備投資も積極的に
すべきだと思うんだ。
これからも編集部ではこうした知られざる自動車の現場に体当り取材を続けていきたいと思います。