ファンへの熱い思い、そして手に汗握るレースの魅力……トップドライバー野尻智紀さんに直撃インタビュー【前編】

     
   

2016年7月17日、2016全日本スーパーフォーミュラ選手権の第3戦決勝が富士スピードウェイにて行われました。サーキットでは、コンマ1秒の競り合いがドラマチックな瞬間を生み出します。脚光を浴びるドライバーの方は、どんな想いでレースに臨んでいるのでしょうか?

今回お話を伺ったのは、ホンダのトップドライバー、野尻智紀(のじりともき)さん!ファンの方への気持ちや、レースでのみどころなどを熱く語っていただきました。

ファンとの交流が、モチベーションアップにつながる

――サーキットではファンがレーシングドライバーと触れ合える時間もありますが、野尻さんは普段、ファンとどんな話をしているのですか?

普通のプロスポーツですと、あまりファンと話ができる機会が無いとは思うのですが、スーパーフォーミュラなどのレースでは、出走前にピット付近まで入ることができる「ピットウォーク」のチケットもあるので、そこへ来てくれるファンからは「頑張ってください」と直接声をかけていただけます。

応援してもらえているんだなっていう実感がわいて、決勝に向けてモチベーションが上がります。レースの直前だと、決勝への激励が多いですけど、差し入れを手渡しでいただくこともありますよ。予選や決勝前なので、ピリピリしていてファンの方に気を遣っていただくこともありますが(笑)。

――どんなファンがいらっしゃるのですか?

年齢は幅広いですね。学生の子もいますし、日本全国、全戦の応援に来てくださる方もいるんですよ。

そこまで熱心なファンは、さすがに顔も覚えますし、すごく良い応援をしてくれる人や、毎回声をかけてくださる人は印象に残ります。

サーキット観戦が初めてでも大丈夫!損はさせない

――サーキットまでモータースポーツを観に行くのは、なかなか敷居が高いと感じる人もいるはずですが、観戦への最初の一歩はどうやって踏み出したら良いでしょう?

サーキットに来たことがない人たちだけで観ようとすると、たしかに敷居が高く感じてしまうかもしれません。

でも、普通にチケットを買って、普通にスタンド席に座っていれば、実況も詳しいですし、面白く解説もしてくれるので、まったく不安なく楽しめますよ。少しでも興味があれば、サーキットに来て観る価値は十分あると思いますね。

――野尻さんはSNSでも情報を発信されていますが、その内容も事前にチェックしたほうがよりレースを楽しめますか?

ツイッターでこちらが発信すると、ファンからコメントが来るのですが、時間があるときには返信するようにしています。少しでも、レースに興味を持ってもらいたいと思って。僕が返信した人が、まだレースに来たことが無い人を誘ってサーキットに来てくれるかもしれないし。

僕自身がレースを観るのが好きなので、観る楽しさを十分に解っているから、自分の情報も細かく発信したい。スーパーフォーミュラだけでなく、日本には『スーパーGT』という面白いレースもあるし、たくさんのお客さんが足を運んでくれるだけの見ごたえはあると思うし、来て損したとは思わないはず。

少しでも興味を持ってもらえることを自分のSNSから発信したいんです。

GTとフォーミュラ、それぞれの魅力

――ドライバーの視点では、観る人にどこを注目してほしいですか?

レースの観戦歴にもよると思いますが、初心者の方が楽しむならスーパーGTの方が面白いかもしれません。

いろんなクルマがありますし、街中で見られないような海外の高級車、例えばランボルギーニのようなクルマもたくさんあるので、きっと観ているだけでも迫力がありますよ。

また、GT500クラスには、ホンダで言えばなんといってもNSX。またGT300クラスには、街中では滅多に見られない海外車種がたくさん走っていたりもしますので。

――フォーミュラは、GTとはまた違う世界ですよね。

スーパーフォーミュラはクルマがみんな同じ形で、速さだけを追求したレース。一度レースが始まってしまうと、なかなかクルマ同士が近づけないし、ドライバーの表情も見えませんが、『どうやってコンマ1秒近づくか、相手にプレッシャーをかけるか、ミスを誘えるか』というのを常にドライバーは考えています。

その中でブレーキングも1メートル、いえ、1センチ単位で、あの速度の中でもブレーキを細かく操作して、いろんなことをやっています。その中で少しずつ差を縮めていき、抜くのが非常に難しいからこそ、抜いたときの盛り上がりというのがフォーミュラの面白さ。そこを見逃さないでほしいです。

正直、フォーミュラのレースの方が、お客さん目線では気が抜けないはず。一瞬でも見ていなかったりすると、順位が変わったり、状況が一変していることもありますからね。

――本当に、今日は観戦中にトイレも行けなかったです(笑)。ここでたとえ1分でも見逃したら、どうなってしまうのだろうって。

そうですよね(笑)。そこがフォーミュラレースの面白さなんです!

――ありがとうございました。後編は、野尻さんの幼少期や愛車など、プライベートについて詳しくお話をお聞きします!

【野尻智紀・プロフィール】

1989年9月15日生まれ(26歳)茨城県出身
身長163㎝ 体重53㎏ 血液型B型

5歳でカートを始め、中学生で全日本ジュニアカート選手権3位、高校生で全日本カート選手権FAクラスのチャンピオンに輝く。2007年、モータースポーツの本場ヨーロッパへと拠点を移し、イタリアンオープンマスターズ、ヨーロッパ選手権、世界選手権、ワールドカップに参戦。2008年に「鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ」を主席で卒業し、翌年にホンダの育成ドライバーとしてフォーミュラカーデビューを果たす。その後、フォーミュラチャレンジジャパン、全日本F3選手権を経験。2014年より「スーパーフォーミュラ」に参戦し、第6戦スポーツランドSUGOで初優勝を飾る。同年には「スーパーGT」のGT300クラスでも活躍し、2015年にはGT500クラスへとステップアップ。

2016年シーズン、スーパーフォーミュラには「ドコモ・ダンデライアン」より、スーパーGTには「ARTA(オートバックス・レーシング・チーム・アグリ)」より参戦中。国内外から大きな注目を集める2つのレースカテゴリーで活躍するレーシングトライバー。

野尻智紀オフィシャルウェブサイト
twitter@tomoki_nojiri

(取材・小池りょう子)

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