スバルが誇る2000cc水平対向DOHC4気筒エンジン・EJ20がとうとう言うかついにというべきか生産終了することになりました。
振り返れば、スバル復興の礎の要であったボクサーエンジンのEJ20。EJ20は、昭和の終わりの頃にうぶ声をあげ、令和元年に寿命を全うした平成の名機とでもいうべきエンジンでしょう。
それは、日産・S20、トヨタ・4AG、ホンダ・B16A、三菱・4G63そしてマツダ・13Bなどとともに、これから名機として語り継がれてゆくことでしょう。
スバルの傑作エンジンEJ20
EJ20の話をする前に1970~80末頃のスバルの状況を少し話さなければいけません。当時の国産メーカーで最下位のスバルは販売不振に喘いでいました。メインバンクの関係から提携していた日産のサニーやパルサーなど委託生産していたことから「スバルは日産に吸収合併される」という噂が絶えませんでした。
ちょうどそのころ開発が進められていたのが、3代目レオーネの新型です。それは、初代レガシィになるのですが今回はエンジンが中心の話です。シャーシはもとよりエンジンもスバル1000から改良に次ぐ改良で使われてきた旧態依然のエンジンで、ライバル他社に比べて見劣りする部分がかなりあったことは否めません。スバルの危機的状況を打破するためにまったく新しくエンジンを開発したのです。
スバルには、ライバルにはない独創的な拘りがあります。ズバリそれは4WDと水平対向エンジンにほかありません。レオーネクーペRXⅡは、スバルが誇る80年代中頃のフラッグシップスポーツでした。1800cc水平対向OHC4気筒ターボエンジンは、最高出力135PSに最大トルクは20kgm。ライバルたちには到底及ばないのは言うまでもありません。
たとえば、ライバルの一台マツダ ファミリアGT-Xは、スバルと三菱の4WD開発の間隙を縫って国産初のフルオートフルタイム4WDの称号を勝ち取った一台です。1600cc直4DOHCターボエンジンは、140PS。スペックで完全に凌駕されています。これでは、販売でライバルに勝てる要素がないことは明白です。
レガシィ開発時には、直列4気筒エンジンを搭載した試作車も作られたようですが、スバルらしさでは水平対向エンジンにまさるものはなかったのでしょう。それは、スバルが中島飛行機から発祥した飛行機屋時代のこだわりなのかもしれませんね。
スバルが拘る4WD。水平対向エンジンは、左右対称に重量配分できるシンメトリカルなレイアウトは、4WDに適したものです。エンジン重心が低くなる水平対向エンジンもスバルが拘る4WDには、低重心で安定しているので、通常の直列エンジンよりも優位になります。スバルの拘りは、まるで男の拘りのようで好感がもてますね。
WRX EJ20 ファイナルエディテイション
EJ20が生産終了することから限定記念モデルが発売されました。その名は、WRX EJ20 ファイナルエディテイションです。EJ20に、一番ふさわしいモデルに限定555台で販売されましたが、瞬く間に売れてしまい完売となってしまいました。WRXは、インプレッサから独立したモデルです。グレード名がモデル名になっています。
ファイナルエディテイションに搭載されたEJ20は、ピストンやコンロッドなどバランス取りされたバランスドエンジン。バランス取りされたエンジンの伸びはまさに天井知らず。アクセルレスポンスも半端ありません。
特別装備は、バランスドエンジン以外にも、クラッチカーバーとクラッチもバランス取りされています。エンジンルームにはEJ20ファイナルエディテイション オーナメントが誇らしげに付けられています。ブレーキは、ブレンボ製ディスクブレークがおごられ、ボディの各所にチェリーピンクのラインとエンブレムでアクセントが付けられています。
初代レガシィ
EJ20が、初めて搭載されたのはレガシィです。初代レガシィは、その速さをアピールするために世界速度記録に挑戦し見事成し遂げています。初代レガシィでは、WRCにさんせんしノウハウを蓄積しながらインプレッサに変わる最後の一戦で悲願のWRC初優勝を成し遂げました。レガシィには、ツインターボや大排気量のボクサー6などEJ20の派生モデルも多くありました。また、ツインターボを装備したEJ20もレガシィのみで2~3代目まで採用されています。
インプレッサ
WRCに参戦していた、スバルがレガシィの後継モデルにしたのがインプレッサです。レガシィよりも一回り小さなボディに2000ccボクサーターボEJ20の強心臓を搭載したインプレッサは、ラリーのスバルを猛烈にアピールさせてくれました。宿敵のランサーEVOとの世代抗争はランサーEVOⅩまで続きましたが、ランサーがモデル消滅となってしまったため今はスバルWRX・S4の一人勝ちでしょう。最高出力は、240PSから国内制限値の280PSまではすぐに到達してしまいました。
EJ20は、初代から3代目モデルまで搭載されその後は別モデルとなったWRXに搭載されています。
◇フォレスタ
フォレスタは、スバルを代表するSUV。今では、日産・X-トレイルやトヨタ・RAV4とも互角に勝負できるハードなオフロード走行も可能です。そんなフォレスタですがインプレッサのシャーシを流用して作られたSUV。車高が高いインプレッサみたいな感じで、オフロードよりもオンロードが得意な一風変わったSUVに仕上がっていました。おとなしいEJ20のSOHCエンジン搭載車や排気量が拡大された2500ccもありましたが、フラッグシップモデルは、もちろんEJ20ターボ搭載車で、初代から3代目まで搭載されました。4代目からは新型エンジンとなり、2000ccボクサーターボエンジンも引き続きラインアップされていますが、EJ20ではなく新型のFA20です。
初代から3代目まで搭載されたEJ20搭載のフォレスタには走りのSTIもそれぞれの世代で設定されていて、高速移動を重視するドライバーからは絶大なる支持を受けていました。
フォレスタも、レガシィと同じように世界速度記録に挑戦して見事成し遂げています。
◇エクシーガ
ミニバンがラインアップされていなかったスバルが満を持して登場させたのがエクシーガです。後席ヒンジ式のドアで3列シートを備えたミニバンは7人乗り。ミニバンなのに走りのEJ20ターボが搭載され、元走り屋のパパたちは狂気乱舞したとか。モデルチェンジでエクシーガクロスオーバー7となりSUVテイストとなりましたが、2018年販売不振から生産中止となりました。スバルから3列シート車がラインナップから消えてしまったのは残念ですね。
まとめ
EJ20は、誕生から30年目に幕を閉じます。まさに平成の始まりから平成が終わり令和が始まった2019年に生産終了となるのは実に感慨深いものがあります。まぁ、EJ20はなくなってしまいますがスバルからはそれに代わるエンジンがあるのでWRXなどの走りのモデルが消滅してしまうわけではないのでご安心してください。