突然舞い込んできた「輸入車」のエンジン載せ替え作業!筆者は、すかさず勉強のため手伝いたいと思ってしまいました。筆者は輸入車のエンジン載せ替え作業は、見たことも作業したこともなかったからです。
大先輩からご連絡をいただき、手伝えることになりました。ここでは、輸入車ならではのエンジン載せ替えの大変さや輸入車ならではの作業性、そしてトラブルなどもご紹介していきます。
載せ替えるアウディA4 ワゴンの情報
引用:筆者撮影画像
平成16年式 アウディA4ワゴン
走行距離250,000㎞
FF駆動
正規輸入でなかったために、取り扱いディーラーではエンジン載せ替えを受けてくれなかったようです。ユーザー様の情報では、エンジンオイルが消費するようになり、調子も少しずつ悪くなっていた様です。
中古で購入したエンジン情報他
引用:筆者撮影画像
ユーザー様が中古で購入したエンジンは、100,000㎞ほどの走行とのこと。ただオイルフィルターのサビの状況からすると、しばらく放置されていた形跡があるように思いました。また解体屋さんでハーネス関係すべてが途中で切断されている状況でした。
エンジンを見てビックリでしたが、縦置きエンジンのFFという構造でした。アウディA4を調べてみると初代A4は、フォルクスワーゲンとプラットフォームを共通化したことで縦置きエンジンベースとなっています。
ご依頼のA4は、フォルクスワーゲンとプラットフォームは共用せず、B6プラットフォームを採用しています。このプラットフォームを使用し縦置きエンジンでFF駆動もしくは4WD駆動方式を採用しています。
実は筆者だけでなく、今回作業や見学する人全員が現車確認するまで、横置きエンジンのFFと思っていました。
エンジン載せ替えをするために搭載されているエンジンを降ろす
引用:筆者撮影画像
1日目の作業
エンジンを降ろす手順。
- サスペンションやアクスル周りを外す(ドライブシャフトなども外す)
- エアコン周りの配管やラジエター周りの配管などの中身を抜き外す
- おろすのに邪魔になるコンプレッサーやマフラー周りを外す
- 配線回りを外す
- コンピューター関連の配線は、エンジンと一体にしておく
- エンジンを降ろすための前作業でほぼ丸一日かかりました。
※筆者ワンポイントアドバイス
輸入車の工具はインチ工具が基本で、トルクスまたは6角が多く使用されています。普段日本車に触っている人からすると、使用する工具のサイズなどいろいろ悩むことが多かった状況です。「このサイズって、これであっている?」、「あれ、合わない」なんてことが多くありました。輸入車には、輸入車用の工具がないと作業ができないところが多いということを知りました。
引用:筆者撮影画像
上記の画像は、ほぼエンジンを降ろすために外す必要のあるパーツをすべて取り除いた状態になっています。今回は、エンジンが縦置きであることなどから、エンジンを前からでなく下からメンバーごと抜く作業をすることにしました。
上の画像では外したパーツがわかりづらいのですが、エンジンルーム内グルっと一周降ろすのに邪魔な配管やパーツなどを取り払っています。
もちろんエンジンオイル、ラジエター液、エアコンガスなどを抜き取っています。ただしミッションオイルは、ミッション形状から抜いてしまうと入れられない可能性があるので抜き取っていません。
※筆者ワンポイントアドバイス
配線コネクター形状や取り外し方も輸入車らしく、特殊なものを使用しています。取り外し方をきちんと考えないとカプラーが割れてしまいます。注意しましょう。
引用:筆者撮影画像
ほぼ丸一日かけて配管や配線を取り除き、折角だからエンジンを降ろす作業まで行ってしまいました。メンバーごと降ろすので、パレットをちょうど良い高さにして、リフトをギリギリまで下げて、フレームからメンバーを外します。
作業手順
- パレットをエンジンを降ろした後でも、車から引き出せる高さに調整
- エンジンの形に合わせて、安定するように角材で高さを調整
- リフトを下げ、エンジンを角材のギリギリの高さまで下げる
- メンバーを止めているメンバーボルトを慎重に全部外す(輸入車は、骨格にアルミ素材を多用しているのでインパクトは使わない)
- リフトをゆっくり上げて、エンジンルーム内でひっかる配線などがないか確認しながらエンジンを降ろす
平成16年車なのに、使用しているボルトやフレームにほとんどサビが発生していませんでした。さすがヨーロッパ車なんだなと感心しました。
引用:筆者撮影画像
エンジンを降ろした後のどんがら状態のエンジンルームです。この作業で一日目は終了しました。
本来であれば、エンジンを降ろす作業の場合は、フロント回りも全部外してしまうのが良いのかもしれません。年式が16年とのことで、ヘッドライトブラケットにヒビが入っていたり、いろいろなパーツの追加交換の可能性も考えて、下から降ろす作業にしました。
引用:筆者撮影画像
2日目の作業
降ろしたエンジン(故障)と中古で購入したエンジンを並べて、いろいろ比較していきます。
降ろしたエンジンから、あらゆるハーネスを移植する必要があります。またタイミングベルトのカバーを開けると、ユーザーから頂いた情報通りに、タイミングベルトやウォーターポンプ、そしてオートテンショナーが新しいものになっていました。オートテンショナーは、対作品に変更にもなっていました。
2日目は、エンジンへのパーツ移植などを行う時間になりました。この作業でほぼ丸一日かかりました。
エンジンを載せる作業
引用:筆者撮影作業
3日目の作業
降ろした時と逆の手順でエンジンを載せます。載せた後は、外した部品を逆の手順で取り付けていきます。この作業は結構時間がかかりました。
作業手順
- 外したパーツを取り付ける。
- ラジエター液、エンジンオイル、エアコンガスなどを充てんする。
- ミッションオイルが入っているか確認する。
いたって単純な作業ではあるのですが、慎重に慎重に作業していくことが重要です。また取り外したボルト類は、パーツごとに区分けしていますが、長さや直径、使用個数などを確認しながら作業していくことが大事でしょう。
あれ?!エンジンがかからない
引用:筆者撮影画像
すべてのパーツや配管、配線がきちんとついていることを確認し、エンジン載せ替え作業は完了しました。いざエンジンを始動してみます。
「あれ?エンジンは始動するのですが、持続しません」。
今回、中古のエンジンに付いていたコンピューターを使用しました。作業した人たちの予想では、エンジンとコンピューターがセットになっているという予想からでした。
じつはそれは間違いで、車両とコンピューターがセットになっていたようです。もともと使用していたコンピューターに変更したらきちんとエンジンがかかりました。
エンジン載せ替え最終日となる4日目は、各部のチェックや液漏れなどがないかを入念にチェックして問題がないことを確認しました。ユーザーの方が車を引き取りに来られて、試乗してもらい問題ないとのことで無事に終了しました。
まとめ
外車(アウディ)のエンジン載せ替え作業をお手伝い!をまとめると
- きちんとした作業場所や工具、そして2人から3人くらいの人数であれば、4日から5日でできる作業であること
- 慌てず、段取りを組みながら作業っすることが重要です。
今回は、アウディA4のエンジン載せ替え作業のお手伝いをしてみました。筆者の個人的な感想では、「やろうと決めたら以外とできるものだな」と非常に勉強になりました。なかなかDIYで作業することのないエンジン載せ替え作業をご紹介しました。