事故で「クルマが悪い!」とは言えなくなる時代に、EDRの義務化へ

     
   

最近になっても痛ましい事故が続いていますね。事故が発生すると、当事者には刑事・行政・民事上の責任が発生することをご存じかと思います(免許を所持している方)。

事故が起きた後の経過として、重大な事故や被害者の状態などによって、当事者(加害者)に対する責任の重さも変わってきます。

昨今では、「クルマが変な動きをした」、「ブレーキを踏んだのに車が動いたままだった」などという当事者の発言から、起きた事故の解決を複雑にしてしまうという現象も起きています。

そんなトラブルを少しでも少なくするために、国土交通省で2022年ごろからEDR(イベント・データ・レコーダー)義務化という構想があがってきました。

ここでは、EDRとは何?ドラレコとかとは違うのなどのお話をしていきます。

事故が起きるとそもそもどういう経過になるの?

引用:https://www.photo-ac.com/main/detail/4539476?title=%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8&searchId=2463627210

事故を起こしてしまい、相手側が傷害や死亡などになってしまった場合には、刑事・行政・民事上の義務が発生します。物損事故のみの場合は、民事上の責任です。

  • 刑事上の責任:加害者側の重大な過失具合などにより、罰金刑、懲役刑、禁固刑などが決定されます。
  • 行政上の責任:事故による交通違反の状況に対して、違反点数がつけられ、免許停止・免許取り消しなどの処分が行われます。
  • 民事上の責任:事故によってケガした方への治療費や慰謝料・逸失利益などを支払う義務が発生します。

これらの責任は、基本的に独立して稼働し、処分が下ることになります。

ただ、事故の詳細がはっきりしないことで、それぞれの責任が決まらないなんてことも起きてきます。

例えば刑事上の裁判で、「クルマがブレーキを踏んでも止まらず、加速した」などと証言したことで、刑事裁判の判決が終了するまで、民事賠償を行う予定である任意保険会社が、相手方への賠償が進まなくなるなどです。

コンビニに突っ込んでしまったという事故は、毎年多く発生していますね。

老若男女とわず、原因特定の難しい事故が発生する可能性も増えていますね。

EDR義務化の声が上がっているのは、何故?

引用:https://www.photo-ac.com/main/detail/4282312?title=%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AE%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%81%AE%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E3%81%AE%E8%BB%8A&searchId=3049776212

国土交通省が、2022年ごろにEDRを義務化へという発表をなぜしたのでしょうか?事の発端には、皆様の記憶にも新しい池袋暴走事故があるともされています。

事故が起きたことは100歩譲って仕方なかったとしても、その後の証言にて「正確な運転をしていたのに、車が勝手に加速して制御できなくなった」ということが、重大かつその他の事故でも多発する事が予想されたからかもしれません。

上記のような事故の場合、被害者側が死亡してしまう可能性も高くなります。被害者が証言することもできないことも在り得ます。

悲惨な事故の解決まで、混沌としてしまうことを未然に防ぐ方法として、EDRの義務化という発想となったと考えます。

EDRとドラレコって、何が違うの?

引用:https://www.photo-ac.com/main/detail/4768489?title=%E6%AD%BB%E4%BA%A1&searchId=663865198

ドライブレコーダ、車内や前方・後方などをカメラとマイクで録画する装置です。もちろんこの映像や音声データが事故の解決に役立っています。このドライブレコーダーは、ユーザーチョイスで装備されているものです。

一方EDRは、エアバックが開いてしまう程度の事故において、前後(大体7秒間ほど)の車両情報を記録して保存しておく装備です。

飛行機でいうフライトボイスレコーダに当たるものであるといます。このEDRは、個人情報などを考慮して、映像や音声が録画されない仕組みです。

スズキの現行モデルスペーシアの取扱説明書では、

EDRは、SRSエアバックと連動して作動する仕組みになっていて、

  • エンジンの回転数など、エンジンの状態
  • ギヤポジションなど、変速機の状態
  • アクセル、ブレーキ、シフトポジションなど、操作の状態
  • 各種コンピュータシステムの故障に関する情報

が記録され、スズキの商品改良や品質アップなどのデータとして使用されるほか、法令・裁判所命令などの際にデータを開示することになっているようです。

それぞれが別々に保存されることで、いろいろな解析が可能になります。

検証例

  • アクセル開度が開いているから、加速している
  • ブレーキを踏んでいるだけなのに、エンジン回転は上がっている

などになります。

クルマの方が異常なのか、それともドライバーの運転操作ミスなのかというのがわかるという事にもなります。

当事者であるドライバーが、「ブレーキを踏んでいたのに加速して、コンビニに突っ込んだ」と証言したとします。

該当車のEDRデータ上では、アクセルを踏んで、エンジン回転があがり、加速しているというデータしかなければ、証言が間違っていたという事にもなりますよね。

実際にEDRという技術は、20年近くすでに運用されているものです。トヨタでは、2012年から販売されている新車には、EDRが標準装備されています。

ただ現在公道走行している車の中には、EDRが装備されていないモデルも多く存在します。諸外国の多くでは、義務化になっているEDRが日本では未義務という事です。

こういった背景から、国土交通省でもEDRの義務化施行に踏み切ることにしたのではないでしょうか。

一方で上記の投稿のように、数値化されても認めない「当事者」が出る、というお話やそのデータは、だれが公平に解析するのという心配もあるようです。

運用する際は、しっかりとしたレギュレーションが必要になるともいえるでしょう。

まとめ

事故で「クルマが悪い!」とは言えなくなる時代に、EDRの義務化へをまとめると

  • EDRは、事故前後の車両情報を記憶してくれる装備です。
  • 事故だけでなく、商品のアップデートなどにも利用されます。
  • EDRの運用には、法的にも有効になるようしっかりとした第三者機関が解析することになりそうです。

事故の際は、気が動転していたり、記憶が飛んでしまったりといろいろな不具合が起こり得ます。公正公平に車両データを解析する時代になったのではないでしょうか。

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