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市場調査会社J.D.POWERの2014年米国自動車初期品質調査、つまり、メーカー別に新車が故障する可能性を調べた調査の結果が発表されました。
(正確には新車の車両購入後90日間に100台当たりの不具合指摘件数の調査)
日本車というと、
「壊れにくい」
というイメージがあります。ところが、この調査の結果を見る限りではなんと、韓国のヒュンダイがトヨタよりも故障しにくいという結果でした。
意外な結果となったこの調査、では詳しく見ていきましょう。
安全性調査の内容
J.D.POWERの調査は2014年型車を購入かリース契約した8万6000人以上の対象者に調査をしています。購入かリース開始後90日を経てから得られた回答を基にしています。
233の質問から構成され、2014年2月から5月にかけて実施されました。
この調査は、ユーザーが指摘した不具合情報を自動車メーカーに提供し、その原因を特定をし車の改善に役立つことを目的としています。
最近の傾向
2014年の新車の初期品質に対するクレームは平均116ポイントでした。これは1年前の113ポイントから増加しています。
クレーム増加の要因として指摘されているのが新型車です。平均128ポイントと、従来車種の新車113ポイントより大きく増えています。
「自動車メーカーは品質を落とさずに、新機能と新テクノロジーを提供しようと試みているが、一部の消費者からは新テクノロジーはわかりにくい、使いにくい、と指摘されている」
デヴィッド・サージェント(J.D.POWERのグローバル・オートモーティブ部門バイス・プレジデント)
この新型車への不具合は主に音声認識やBluetooth対応、オーディオシステムなどの先進技術の故障が増えているとレポートしています。
つまり、自動車の走行技術の品質は落ちていなくても、先進技術への対応がうまくいっていない事を示しています。
調査結果
ここで、トヨタ・ヒュンダイ以外の主要なメーカーの数値を確認してみましょう。
100台あたりの不具合指摘件数:PP100
自動車メーカー名 | 100台あたりの不具合指摘件数 |
---|---|
業界平均 | 116 |
ポルシェ | 74 |
ヒュンダイ | 94 |
トヨタ | 105 |
ホンダ | 108 |
日産 | 129 |
スバル | 138 |
ジープ | 146 |
フィアット | 206 |
資料:JD.パワー2014年米国自動車初期品質調査(IQS)
ヒュンダイって何だっけ?
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ところで、ヒュンダイとはどんな自動車メーカーだったでしょうか。いまいち日本では知名度が高くない「ヒュンダイ(現代)」がどんなメーカーなのかを紹介します。
ヒュンダイの歴史
ヒュンダイは1967年に創立された韓国最大の自動車メーカーです。漢字表記では「現代」。当初は米・フォードと提携し、フォード・コルチナのノックダウン生産を始めました。
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1975年には三菱自動車の協力関係を得て、韓国初の国産車ポニーを発売。その後も三菱自動車のプラットフォームを利用した車種を生産しました。1990年には累計生産が400万台を突破。世界戦略を打ち出し、国際的企業へと成長しました。
日本市場へは2001年に参入、大がかりなキャンペーンが張られましたが、日本では振るわず、2010年には日本市場から乗用車販売は撤退しています。韓国国内のストや不況などの影響で、低迷する時代もありましたが、現在も世界でベスト10に入る自動車メーカーです。年間160万台の生産能力を持っています。
ヒュンダイの代表モデル
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2000年前後、北米で躍進したモデルが「ソナタ」です。1985年に初代が発売された中型セダンで、その後何代も後継車種が発表されています。
ソナタはヒュンダイがカナダに初めて設立した海外工場の主力車種でした。現在のNFソナタも北米での主力モデルとなっています。
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高級セダンとして開発されたジェネシスは2008年に登場しました。北米仕様にはV8、4.6リットルクラスが投入され、日本のレクサス、アキュラなどのライバルとなっています。
ヒュンダイにまつわる主なニュース・出来事
ヒュンダイは、北米に続いて中国市場に進出を強化しています。
2015年7月1日に、北京現代(ヒュンダイの中国法人)は、J.D.POWERの2015年中国販売満足度評価で2年連続1位になった、と発表しました。
一方で2015年2月、中国メディアはヒュンダイの中国市場での伸びはもはや2桁に届かないと指摘。さらに、ヒュンダイが発表したエコカー、自動走行車開発への7兆円以上となる投資計画が韓国経済に暗雲をもたらす可能性もあると論評しています。
トヨタはヒュンダイに負けたけど、LEXUSは勝っている
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J.D.POWERの表を見ると、4位のヒュンダイを上回る3位にレクサスが入っています。レクサスはトヨタの高級ブランドで、ヒュンダイより高い評価を得ました。
また、7位の起亜自動車はヒュンダイ傘下のメーカーです。
これらのポイントを合計すると、レクサス・トヨタで197ポイント、ヒュンダイ・起亜が200ポイントと、トヨタ側が優れていることになります。
レクサスはプラントアワードも受賞しています。レクサスRTを製造するカナダ・オンタリオ州のトヨタ・ケンブリッジ南工場が不具合指摘件数が最も少ないモデルを生産してプラチナ賞を受賞しました。また、アジア地域ではやはりレクサスを製造するトヨタの九州第1工場と第2工場がゴールド賞を得ています。
さらに、ベスト10を見ると9位にホンダが入り、アジアからは5社が入っています。欧米大手メーカーでは、アウディが11位、キャデラック、メルセデス13位、フォード16位となり、アジアメーカーの品質の高さを示しています。
まとめ
J.D.POWERは、今調査における初期品質とブランドロイヤリティの相関関係について、90日間の間になんらかの不具合があった場合、ユーザーが持つそのブランドに対するイメージは悪化しますするとしています。それだけでなく、将来ユーザーが次の車を購入する際にどのブランドを選ぶかにまで長く影響するといいます。
そのため、故障率が上がることで徐々にシェアを狭めていってしまう可能性も否定できないのです。先端技術を取り入れることは大切ですが、それと同時に初期不良をおさえることもまた大切なのです。