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フェンダーのカスタムにフォーカスしたフェンダリスト・ジャパン2018とは?
2018年に初開催されたカスタムカーショウ
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2018年11月25日に初めて開かれた、フェンダリスト・ジャパン2018というイベント。フェンダリストという言葉は聞き慣れませんが、クルマのフェンダー、すなわちタイヤハウスを包み込むボディの美しさを追求し、カスタマイズする人のことです。
自動車のデザインにおいて、フェンダーのシルエットというのは一般的にあまり意識されないかもしれません。しかし、車体を前後左右、どの角度から眺めても、必ず目に入るのがフェンダーなのです。
クルマのデザインにおいて、意外に大きな存在感を持っている前後4カ所のフェンダー。そのスタイルにこだわり抜いたカスタムカーが一堂に会したのが、2018年11月に山梨県甲府市で開かれたフェンダリスト・ジャパン2018です。
屋内外の展示会場には全国各地のショップやメーカー、プライベーターから数百台ものカスタムカーが出展され、その出来映えを目にしようと大勢の観客が訪れました。
カスタムカーが集結するイベントはさまざまな規模、形式で開かれていますが、フェンダーに焦点を当てたものは類を見ません。裏を返せば、こうしたイベントが催されるまでに、フェンダーカスタムのスタイルは多様化し、進化しているといえます。
フェンダリスト・ジャパン2018は、フェンダーカスタムを18のジャンルに細分化したイベントです。フェンダー単体、あるいはフェンダーを基準としたトータルバランスに優れた各ジャンルのフェンダリストには、アワードが贈られました。
フェンダーをカスタムする理由は?
クルマの雰囲気が一変
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一口にフェンダーといっても、スポーツカーやセダン、ワンボックスカーなど、クルマのタイプや目的によって、さまざまな形状を持っています。
その一番の要因は、タイヤによるもの。ハイスペックのスポーツカーとタウンユースのファミリーカーでは、装着するタイヤも異なります。4本のタイヤをボディの幅に収めるフェンダーの形状が異なるのも当然なのです。
最も多いのは、アルミホイールをインチアップしたり、ワイドトレッドタイヤを装着する際のフェンダーカスタムでしょう。ノーマルのタイヤハウスに収まり切らないタイヤ(アルミホイール)も、フェンダーの膨らみを増せばフィットさせることができます。
ボディとのトータルバランスに優れたフェンダーカスタムは、クルマ全体の雰囲気を様変わりさせるほどの効果をもたらします。装着するタイヤ(アルミホイール)に合わせてボディの幅を広げることで、圧倒的な迫力を手に入れることもできるのです。
フェンダーのカスタムスタイルはこんなにある!
オーバーフェンダー
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俗に「オバフェン」「バーフェン」とも称されるフェンダーカスタムがオーバーフェンダー。ノーマルボディのフェンダーの縁を切り取り、その上からアーチ形状のパーツを取り付けるという工程が一般的です。
単なるドレスアップが目的の場合、ノーマルボディのフェンダーを加工せず、パーツをかぶせただけのカスタムも見られます。手間や出費を抑えながら、スパルタンなエクステリアデザインを手に入れられるのが魅力です。
パーツはビスやリベットで留めるケースが多いため、いわゆるワークススタイルと呼ばれるレーシーな雰囲気を出すにはぴったり。1970年代から1980年代にかけて生産された旧車をドレスアップする際に好んで取り入れる人が多いスタイルです。
日産・スカイラインGT-R(KPGC110、ケンメリ)やトヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノ(TE27)には、純正のビス留めオーバーフェンダーが装着されていました。オーバーフェンダーは、オフロードタイヤを履くSUVなどにも見られます。
ブリスターフェンダー
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英語のブリスターの意味は「水ぶくれ」。その名の通り、フェンダーの縁だけでなくボディの全体がくっきりと膨らんだ形状が特徴です。ボディと一体化するため、空力特性に優れています。クルマ好きの間では「ブリフェン」と略されることもしばしばです。
ブリスターフェンダーは面積が広いため、リアに取り付ける場合はボディの上に重ねるのが一般的。しかし、取り付けが難しいフロントの場合は、フェンダー部分のボディごと交換してしまうパターンがほとんどです
オーバーフェンダーと比べて見た目のインパクトが強いのも、ブリスターフェンダーの特徴です。市販車では日産・スカイラインGT-R(R32、R33、R34)、スバル・インプレッサWRX22Bなどが純正のブリスターフェンダーを採用しています。
スラムド
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フェンダーをカスタムする目的は、単にワイドトレッドタイヤを履くためばかりではありません。米国西海岸発祥の自動車カスタムであるスラムドは、エアサスなどを駆使して、車高を極端に下げるスタイル。その低さは、車底部が接地してしまうほどです。
車高を下げる上で大きなキャンバー角がつけられた大径タイヤを収めるには当然、フェンダーを加工しなければなりません。そこで定着したのが、フェンダーアーチをタイヤにかぶせるというスタイル。まるで、フェンダーがタイヤを飲み込んでいるようです。
スポーツコンパクト(スポコン)が由来といわれるフェンダーカスタムのスタイル。タイヤとボディを調和させるのがフェンダーの役割なら、従来と異なるアプローチでタイヤと調和しているのがスラムドのフェンダーです。
サイクルフェンダー
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タイヤの外径に沿い、タイヤハウス内の空間を作り直す手法がサイクルフェンダーです。文字通り、2輪車の泥よけのような形状のフェンダーです。
極太の大径タイヤを装着するなど通常のインナー加工では対応し切れない場合、タイヤの外周と干渉しない、文字通り2輪車のようなフェンダーを製作し、タイヤハウスに組み込んでしまうという手法です。
大がかりなカスタムでありながら、ボディ外側からはフェンダーを加工しているように見えにくいのが特徴。ボディを眺めただけでは分かりにくいため、愛車のシルエットを崩すことなく足回りをカスタムできる点が人気の秘密です。
純正ボディを生かしたフェンダーカスタム
叩き出しフェンダー
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オーバーフェンダーやブリスターフェンダーのように新たなパーツを必要としないのが、古くからある「叩き出し」と呼ばれる手法。ノーマルボディのフェンダーを裏側からハンマーなどで叩いて押し出し、ワイド化を図るものです。
ノーマルボディを広げるだけなので、オーバーフェンダーなどより簡単かと思いきや、実はそうでもありません。前後のフェンダーのアーチ、膨らみを整えるだけでなく、バンパーとのちりもしっかり合わせるには、技術と経験がものをいいます。
見た目が劇的に変化するほどのワイドフェンダー化は期待できない半面、そのさりげなさが大きな魅力でもあるのが叩き出しという手法。根気強い作業が施され、きれいに仕上がった叩き出しフェンダーは、まさに工芸品のような美しさです。
耳折・爪折りフェンダー
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フェンダーのボディの端である耳、爪の部分のパネルをしっかりと折り込むことで、タイヤとフェンダーアーチの接触を防ぐのが「耳折・爪折りフェンダー」です。いわゆるツライチを狙う際に使われることが多いドレスアップの手法です。
さらに、折り込まれた部分の鉄板を切り落とし、フェンダーアーチの部分を薄くする「爪(耳)切り」というカスタムも。フェンダーの強度が落ちるといったリスクはありますが、「折り」よりも手軽なのが特徴です。
トータルバランスとしてのフェンダーカスタム
シェイプ、ライン、イコール
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「シェイプ」とはフェンダーアーチの形状、「ライン」はフェンダーからバンパーへと流れるボディライン、「イコール」は前後のフェンダーのバランスを指した言葉。いずれも、フェンダーカスタムの完成度を測る基準となるものです。
このほかにも、フェンダー、アルミホイール、タイヤのマッチングを追求する「セレクト」、アルミホイールのリムとフェンダーアーチの距離を詰める「リレーション」といった基準があります。
これらは、フェンダリスト・ジャパン2018で設けられたアワードリストでもあります。カスタムカーの世界において、トータルコーディネートを司る役割を果たすのが、現在のフェンダーカスタムのトレンドなのです。
まとめ
自動車デザインが進化する限り
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自動車が誕生してからしばらくの間、フェンダーはボディ本体から独立した部品でした。ボディと一体化したフェンダー、つまりフラッシュサイド化されたフェンダーが普及したのは、戦後のことです。
昔も今も、フェンダーの基本的な役割は変わりません。しかし、自動車が進化を遂げた過程で大きく変化したパーツの1つであることは間違いありません。自動車デザインが進化する限り、フェンダーも進化するといえるのです。