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さて前回は「いすゞ」という自動車メーカーと、コンパクトカーの歴史を主に振り返ってきました。今回はその後編として、ミドルクラスのセダンやSUV、ワゴン車の歴史を見ていきましょう。
いずれも名車揃い、ファンにはたまらないクルマたちばかりです。
3つの顔を持つクルマ「フローリアン」
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トヨタ・コロナや日産・ブルーバードなどのミドルクラスへの対抗策として企画されたクルマが、フローリアンです。
最初期モデルのデザインは、イタリアの名門カロッツェリアであるギア社にて行われました。背が高いデザインながらも、全体的にはまとまりの良いボディとなっています。
途中2度のマイナーチェンジを経て、15年もの長きにわたり販売されました。それぞれ前期型、中期型、後期型と呼ばれますが、同じクルマとは思えないほどに顔つきが異なっています。
特に後期型はそのルックスから「和製ロールス・ロイス」とも呼ばれています。
流麗なフォルムが特徴的な「117クーペ」
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フローリアンと時を同じく生み出されたクルマが、117クーペです。このクルマもギア社によりデザインされており、実はフローリアンとは兄弟車の関係にあるのです。
技術的に注目すべき点は、日本で初めてエンジンに電子燃料噴射装置(ボッシュ製Dジェトロニック方式)が採用されたことです。このエンジンの設計にはデザイナーも関わっていたこともあり、見た目も非常に美しく仕上がっているのが特徴です。また、国産クーペとしては初めてディーゼルエンジンが搭載されたのもこのクルマです。
初期型はプロトタイプのデザインを忠実に再現すべく、ほぼ手作業で生産されていました。このモデルは「ハンドメイド」と呼ばれ、今でも高値で取引きされています。その後量産体制が整い、13年生産されました。いすゞ、そして日本を代表する名車の1台です。
世界的デザイナーに託された「ピアッツァ」
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美しいデザインで人々の記憶に刻まれた117クーペの後継車としてデビューしたのが、初代ピアッツァです。
デザイナーは117クーペをまとめ、初代フォルクスワーゲン・ゴルフや初代フィアット・パンダなども手掛けたジョルジェット・ジウジアーロ。コンセプトモデルである「アッソ・デ・フィオーリ」のデザインを忠実に再現したことも大きな話題となりました。ハッチバックの出で立ちでありながら、大人4人がゆったりと座れるサルーン感覚のクルマでした。
デザインコンシャスなだけでなく硬派なスポーティ路線のモデルが多いのも特徴で、西ドイツ(当時)のチューナー「イルムシャー」仕様や、スポーツカーメーカーであるロータスが足周りをリセッティングした「ハンドリング・バイ・ロータス」仕様がありました。中でも「ハンドリング・バイ・ロータス」ではロードホールディングを高めるため、リアサスペンションの形式が改められています。
2代目は駆動方式がFFに変わりましたが、初代が10年生産されたのに対しわずか2年と短命に終わった悲劇のモデルでした。
先進技術を一心に搭載した「アスカ」
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長きにわたり生産されたフローリアンの後継車として登場したクルマが、アスカです。デビュー当初は「フローリアン・アスカ」と名乗っていました。
発売当初から、いすゞのお家芸となったディーゼルエンジン車もラインナップ。その後、ディーゼルターボ車も追加されています。
このクルマの最大のトピックといえば、電子制御マニュアルトランスミッション「NAVi5」の採用でしょう。当時いすゞは自前のオートマチックが3速のものしかなく、ライバルと大きく水をあけられていました。そこで既存のマニュアルミッションを用い、これを自動化する方針を取ったのです。
こうして完成したNAVi5は、マニュアル車の燃費性能とオートマチック車のイージードライブ性を同時に獲得することに成功しました。
しかしシステム的には未完成な部分も多く、エンジニアの理想に当時の技術が追いついていない感じは否めませんでした。ただ、このミッションが現在のデュアルクラッチトランスミッションなどの嚆矢となったのは確かです。そうした意味では、技術のいすゞを代表するクルマと言えるでしょう。
なお2代目はスバル・レガシィ、3〜4代目はホンダ・アコードのOEM車となります。
SUVブームの先駆者「ビッグホーン」
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三菱・パジェロなどと同時期に発売され、乗用車のコンポーネンツを四輪駆動車に流用するというモデルの草分け的存在となったのがビッグホーンです。初期モデルはバン的なモデルが多かったため、ライバルたちと比べ廉価なイメージが最後まで払拭できませんでした。
しかしその一方で、スポーツ性を高めた「イルムシャー」仕様や、ラグジュアリー性能を重視した「ハンドリング・バイ・ロータス」仕様など、いすゞが得意とするラインナップ構成で攻めたクルマでもありました。
ビッグホーンは2代21年に渡り生産され、国内ではホンダ・ホライゾンやスバル・ビッグホーンというOEM車が、また海外を見てみるとシボレー・トゥルーパーやホールデン・ジャッカルー、オペル(ボクスホール)・モントレーなど多くの兄弟車が存在しました。
実は長寿モデルだった「ファーゴ」
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いすゞ唯一のワンボックスタイプのワゴンモデルとして発売されたのが、ファーゴです。当時販売されていたピアッツァなどに通ずる、ウィンドウの面積が大きく取られたルーミーなフォルムが大きな特徴です。
しかし外観は保守的で地味なスタイリングなもので、販売は好調とは言い難いものでした。また、4WD車にはオートマチック車が設定されていなかったのも敗因と言えます。
初代は15年にわたり販売され、その後日産・キャラバンのOEM車にスイッチ。そして1997年には日産・エルグランドのOEM車になり「ファーゴ・フィリー」として再出発。1999年にファーゴの名が外れ「フィリー」と名乗ります。結局ファーゴは、17年販売されていたことになります。
2回にわたり、いすゞの名車たちを見てきました。いすゞのクルマの魅力、それはズバリ日本車離れした個性的なスタイリングと、先進的な技術にあります。だからこそ、クルマ好きの心をとらえて離さないのでしょう。
事実、『湾岸ミッドナイト』などで有名な楠みちはる氏の漫画『あいつとララバイ』にも「やっぱクルマはいすゞだよね」というセリフが出てきます。
残念ながら日本では乗用車から撤退してしまった(海外向けには「mu-X」というSUVがあります)いすゞですが、中古車を見てみるとビッグホーンなどのSUVはまだ出回っています。またごく少数ながら、ベレットや117クーペ、ピアッツァなども専門店で取り扱いがあります。
本物のエンスーを気取るなら一度は乗ってみたい、よく知っておきたいブランド、それがいすゞ自動車なのです。
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