多くの街で愛されたベーシック、日産・マーチ

     
   

2016年9月29日、ついにパリモーターショーにてアンヴェールされた「日産・マイクラGen5」。マイクラとはマーチの輸出名で、来年3月よりヨーロッパ各国で発売される予定です。

日本のみならず、海外でも高い人気を持つマイクラこと「日産・マーチ」。ここでは、そんなマーチの歴史を振り返ってみることにしましょう。日産のタウンベーシックとして多くの人に愛されたマーチとは、一体どんなクルマだったのでしょうか。

長いモデルライフを誇った初代

photo by Charles01(CC 表示-継承 3.0)

1981年に行われた東京モーターショーにて、日産はあるコンパクトカーを出品します。それが「NX-018」です。当時トヨタ・スターレットやダイハツ・シャレードなどのリッターカーが現れはじめ、それに危機感を感じた日産陣営がリッターカー市場に参入すべく開発されたクルマでした。開発主管は、のちに名車と呼ばれるR32型スカイラインの開発を担当することになる、旧プリンス自動車出身の伊藤修令氏が、デザインは初代フォルクスワーゲン・ゴルフや初代フィアット・パンダなどでも腕を振るったジョルジェット・ジウジアーロ氏が行いました。このジウジアーロ氏のデザインによるボディは、シンプルで飽きの来ないもので、どこか欧州のコンパクトカーの雰囲気を漂わせるものでした。

車名は一般公募で募ることになり「新型車の思想を反映したもの」「商標登録上問題のないもの」「発音しやすく覚えやすいもの」という面も考慮され、応募総数565万1,318通の中から「マーチ」という名称が選ばれました。

初代マーチは10年にも及ぶ長い期間販売され、街中やモータースポーツフィールドで多く見ることができました。また、市場実験的意味合いを持つ「パイクカー」も多く企画され「Be-1」や「PAO」、「フィガロ」という個性的なクルマが送り出されました。これらのクルマは現在も人気で、中古車市場では高値で取り引きされています。

欧州でも認められた2代目

1992年、マーチは初のモデルチェンジを受けて2代目へと進化します。日産初の造形用CADシステムである「STYLO」を用いて設計されたクルマで、丸みを帯びたスタイリングが特徴となっています。

開発当初から欧州市場への進出を考慮されており、欧州のコンパクトカーに負けない動力性能や快適性、合理的なパッケージングを目指していたところが他社のコンパクトカーと最も異なっていた点です。それまで「価格は安いが、品質は欧州車に一歩譲る」といわれていた日本のコンパクトカーですが、2代目マーチの登場は市場に大きなインパクトを与え「コンパクトカーの革命児」とも呼ばれました。

日産の目論見どおり、欧州市場でも大ヒットを飛ばしたこのクルマは、1992年には欧州カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。日本車としては初めての受賞という栄冠を勝ち取りました。また国内でも、グッドデザイン賞や日本カー・オブ・ザ・イヤー、RJCカー・オブ・ザ・イヤーを受賞。名実ともに、1990年代を代表するコンパクトカーとなります。

その後、競合他社より様々なコンパクトカーが発売されますが、2代目マーチも10年という長きにわたり競争力を維持してきました。これはまさに、クルマとしての基本性能がしっかりしていたことの証明といえるでしょう。

ゴーン体制初の新型車となった3代目

photo by Tennen-Gas(CC 表示-継承 3.0)

2002年に3代目となったマーチは、カルロス・ゴーン氏のCEO就任後初めて開発されたクルマとなりました。ルノーとのシナジー効果を活かすべく、プラットフォームにはルノー・クリオなどと共通のBプラットフォームを採用。エンジンも新開発の1.0/1.2/1.4リッターエンジンが搭載されました。また、電動式4WD機構を持った「e-4WD」もラインナップ。後輪を何と日立製作所の業務用洗濯機モーターの改良版で駆動するという、変わり種的なシステムが用いられていたのです。

目玉が飛び出た、驚いたような表情を持つ個性的なスタイリングは、女性の圧倒的な支持を得ることに成功。またカラーリングもキャラが立っており、クルマの優れたカラーリングに贈られる「オートカラーアゥォード」を3度も受賞しました。

モデル中期からは、スポーツ性能をさらに高めた「12SR」が登場。久々の日本発のホットハッチということで、男性ユーザーのハートも掴みました。

グローバルな視点で設計された4代目

大好評であった3代目を受け継いだ現行型は、2010年にデビューしました。この代からは国内生産ではなく、日本仕様はタイより輸入されるようになります。同社のラティオやノートと共通のVプラットフォームを採用し、部品点数の大幅な削減や組み立ての高効率化が図られているのが特徴です。

先代のデザインをうまく継承し、コンパクトでありながらもしっかりと四隅に踏ん張りの効いたものになっています。また空力性能も高められ、燃費向上に貢献。可愛らしさと機能性を高次元で両立しました。

4代目にもスポーティグレードが設定され「NISMO」「NISMO S」を名乗っています。先代の12SRよりもさらにスポーティで、プレミアム性も同時に高められたグレードとして走りを愛するドライバーの注目を集めているのです。

「マイクラGen5」は欧州専売?

さて今後の動向が注目される新型マイクラですが、最新の情報では欧州専売となり、日本国内導入の可能性は極めて低いとのこと。非常に残念な話ですが、日本では3ナンバーとなってしまうボディサイズや現行ノートとの市場でのバッティングということを考えると、仕方がないといえます。とはいえ、欧州へ旅行に行った際はレンタカーなどで借りてみて、その実力を試してみたいものですね。

果たして国内仕様の次期マーチがどうなるのか、これからもしっかりと追って行きたいところです。

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