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「ランエボ」復活!?最強のラリーウェポンの伝説を改めて振り返る

2017.07.10

photo by 三菱自動車工業株式会社

去る6月23日に行われた三菱自動車の株主総会で、益子CEOが「いつか新しいパジェロやランサーエボリューションの開発に挑戦したい」との考えを示しました。ここでは、三菱の至宝ともいえるランサーエボリューションシリーズについて特集。かつてスバル・インプレッサとともに、モータースポーツフィールドを沸かせた名車の歴史を振り返っていきたいと思います。

「ランエボ」誕生前史

ギャラン VR-4(photo by 三菱自動車工業株式会社)

三菱は古くからコルトやギャラン、ランサーなどで国際ラリーに参戦し、その技術を市販車にフィードバックしてきました。1980年代初頭、WRC(世界ラリー選手権)の世界はハイパワー4WDが主力のグループBに移行します。三菱は活躍の座を失いかけますが、スタリオンを4WD化することでこれに対応。精力的にテストをこなします。しかし速すぎるグループBマシンは重大な事故が頻発するなど、安全性を疑問視されるようになりました。そして1986年のヘンリ・トイヴォネンの事故死をきっかけに、グループBは消滅。またも三菱は参戦のチャンスを失います。ただ1987年からは市販車ベースのグループAで争われるようになり、三菱は当時最新鋭のマシンであるギャランVR-4で出場。時折上位に食い込む走りも見せますが、ライバルと比較すると戦闘力に差があるのは否めませんでした。ウィークポイントは、大柄な車体と車重。これを克服すべく進められたプロジェクトが、ランサーエボリューションの開発というわけです。

当時の三菱の持てる技術を結集した「エボⅠ」

ギャランより軽く、コンパクトなボディということで白羽の矢が立ったのは、4代目となるランサーでした。車体強度が高められていた中東向け仕様をベースに、ギャランVR-4の2リッター直列4気筒ターボである4G63型エンジンを搭載。ドライブトレーンはセンターデフにビスカスカップリングを採用した4WDとし、リアにもビスカスLSDを組み合わせていました。軽量化のためアルミボンネットが採用され、リアには大型のリアスポイラーが装備されます。ラインナップはロードユースにも適した「GSR」と競技ベースの「RS」という構成になっており、ここからランエボの歴史が始まっていくのです。

ラリーでの技術を早くもフィードバック「エボⅡ」

1993年のWRCを戦ったエボⅠの技術をフィードバックするかたちで生まれたのが、エボⅡです。エボⅠからの変更内容はターボのブースト圧やバルブリフト量のアップ、足周りの見直し、ボディ剛性の向上、タイヤサイズの拡大、1~2速のローギアード化など多岐にわたります。また、リアデフには機械式LSDを採用。これにより、強力なトラクション性能が得られるようになりました。これに合わせるかのようにホイールベースやトレッドが拡大され、安定性も増すことになります。

空力&冷却性能向上に心血を注いだ「エボⅢ」

エボⅡにて熟成されたメカニカルコンポーネンツをもとに、新たに空力や冷却性能の向上を目標としたモデルがエボⅢです。エアロパーツは一新され、大型化されたバンパーやサイドステップ、リアウイングが目を引きます。特にフロントは大きく口が開いたようなタイプとなり、下部サイドにはブレーキ冷却のための穴が設けられました。そしてリアウイングは、後年WRカーの規定を作成するうえで参考にされたという逸話も残っています。もちろん変わったのは見た目だけでなく、エンジンに関しても圧縮比アップやターボのコンプレッサー変更が行われました。また排圧低減の効果もあり、エボⅡから10馬力アップの270馬力を達成します。

飛躍的な戦闘力アップを果たした「エボⅣ」

ランサーが5代目へとモデルチェンジしたことにより、エボⅣはこれをベースとすることになりました。このモデルのもっとも大きな特徴は、AYC(アクティブヨーコントロール)の採用です。これは左右の駆動力を変化させることで旋回性能を大きく高めるシステムで、走行安定性の向上にも寄与しています。ただこの頃のAYCは未完成な部分も多く、トラブルが頻発。熟成は次期モデル以降まで待つことになります。エンジンについてはインタークーラーの大容量化やツインスクロールターボの搭載により、ついに自主規制いっぱいの280馬力に到達。飛躍的に戦闘力がアップしました。

初の3ナンバーランエボ「エボⅤ」

これまでのランサーエボリューションシリーズの最大の弱点であった、ナローボディ。これを解決し、タイヤやブレーキ容量をアップさせるべくワイドボディ化に踏み切ったのがエボⅤです。これによりサスペンション形状の自由度も増し、アームの長さや取り付け位置なども変更されました。もちろん日本の法規上、3ナンバーとなります。発売当時の280馬力クラスのクルマとしては飛びぬけた戦闘力を誇り、車格が上のクルマとも堂々と渡り合えるポテンシャルを秘めていたことは特筆すべき点でしょう。ブレーキにはブレンボ製のキャリパーを採用。またAYCにはヘリカルLSDがフロントに組み合わされ、旋回性能がさらに向上しました。

さらにレスポンスアップを実現した「エボⅥ」

主に1999年シーズンのWRCを戦うべく細部をリファインしたモデルが、エボⅥです。空気抵抗やフロントリフトの改善、また冷却性能向上のためナンバーをオフセット、フォグランプの小型化などが行われました。リアスポイラーは小型化されて可変型の2枚羽根タイプへと変更されましたが、これはWRCの規定変更を受けてのもの。エンジンのスペックについては大きな変更はありませんが、エアインテークのホースの径やターボの吸気入り口の径の拡大といった変更が行われ、おもに高回転域でのレスポンス向上がはかられました。これに加えて競技ベースの「RS」では、チタン合金製タービンホイールを世界で初採用しています。また2000年にはトミ・マキネン氏の4年連続WRCドライバーズチャンピオン獲得を記念し、エボⅥをベースとした「トミ・マキネンエディション」を発売。中低速でのレスポンス向上を狙ったチタンアルミ合金ターボや、専用のエアロパーツが装着されました。

ランエボ、新世代へ突入「エボⅦ」

長らくランエボのベースとなっていたランサーがランサーセディアへとモデルチェンジしたことにより、エボⅦもランサーセディアベースとなりました。この新しい構造のボディは強度が大幅にアップし、エボⅥ比で1.5倍の曲げ剛性を実現。ストリートチューンにおいても、この恩恵は十分以上に享受することができました。エンジンパワーは依然280馬力のままでしたが、トルクは39キロまで高められており加速性能が大幅にアップ。新開発のACD(アクティブセンターディファレンシャル)はAYCと統合制御することにより、前後左右のトルク配分を制御することが可能になりました。2002年にはATモデル「GT-A」を追加。イージードライブとスポーツドライビングを高い次元で両立したのです。

ついに6速化を果たした「エボⅧ」

ダイムラー・クライスラーから移籍したデザイナー、オリビエ・ブーレイの提唱するデザインアイデンティティを取り入れたフロントマスクが印象的なランエボがエボⅧです。もちろん変わったのはデザインだけでなく、トルクはついに40キロにアップ。これに対応すべく、トランスミッションが6速マニュアルに変更されました。AYCも進化し、左右トルクの移動量を2倍とした「スーパーAYC」を搭載。このスーパーAYCの評価は高く、旋回性能でライバルを超えたとさえいわれました。2004年、このエボⅧをさらに熟成させた「MR」を発売。三菱のスポーツモデル伝統のネーミングが冠されたこのクルマは、国産車初となるアルミルーフパネルを採用。このほかにもビルシュタイン製ダンパーの採用や、40.8キロまでトルクが高められたエンジンなどがトピックです。

多彩な顔を持つ「エボⅨ」

4G63型エンジンを搭載する最後のランエボとして有名なのが、エボⅨです。このエボⅨでの注目点はエンジンで、ランエボに搭載されるエンジンとしては初めてMIVEC(連続可変バルブタイミング機構)が採用されました。ターボのコンプレッサーホイールにマグネシウム合金を採用することにより、低回転域でのトルクとレスポンスアップがはかられたのが改良点です。このエボⅨはラインナップが充実しているのが特徴で、従来の「GSR」「RS」に加えて「GT」を設定。またワゴンボディの「ランサー エボリューションワゴン」や、エボⅧに続いてさらに走りの性能に磨きをかけた「MR」も用意されました。

最強のランエボ、降臨―「エボⅩ」

2007年にギャランフォルティスをベースとして誕生したランエボが「エボⅩ」です。エクステリアのデザインは、その年のデトロイトショーでアンヴェールされた「Prototype-X」ほぼそのもの。エンジンは4B11型となり、280馬力を発生しました(2008年に行われたマイナーチェンジで300馬力へとパワーアップ)。トランスミッションはコンベンショナルな5速マニュアルのほかに、ドイツのゲトラグ社と共同開発した「ツインクラッチSST」が選択できました。ほぼ毎年のようにアップデートを重ねてきたエボⅩでしたが、2015年に三菱はランエボの生産終了を発表。これに伴い発売された限定車が「ランサーエボリューション ファイナルエディション」です。車名に「Ⅹ」が付かないのは、ランサーエボリューションシリーズそのものにピリオドが打たれるということを意味しています。ナトリウム封入エキゾーストバルブを採用することにより、最高出力は313馬力にアップ。また、通常オプション扱いとなるハイパフォーマンスパッケージが標準装備されています。

やはりクルマは、ライバルがいるから面白い

2016年4月、三菱はランサーエボリューションの販売を終了します。それは世間を騒がせた燃費不正問題の陰に隠れ、あまりにもひっそりとした幕引きでした。WRCというスポーツを日本に広く認知させ、多くの勝利を刻んだその功績はあまりにも大きいものです。三菱社内にも多くのファンがいるというランエボ。その復活ともなれば、社員のモチベーションアップにも必ず役に立つことでしょう。かつて「スポーツは、ライバルがいるから面白い」という三菱の名コピーがありましたが、ランエボにもスバル・WRXというかけがえのないライバルがいます。WRXが進化するためにも、ランエボは必要な存在なのです。現在三菱の会長を務めるカルロス・ゴーン氏が日産でGT-Rを見事に復活させたように、ランエボも華麗なる復活を遂げてほしいものですね。

【関連項目】

”The top of Subaru.” 株式会社スバルの魅力をWRXから紐解く

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文:イキクル編集部


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