2016年11月にフルモデルチェンジが発表、今月から発売が開始されたマツダ・CX-5。早速クルマ好きの間では話題の1台として、2017年初頭から台風の目となりそうな雰囲気です。今回はマツダのクルマづくりを大きく変えた先代の歴史を振り返りつつ、新型CX-5の性能や特徴など、その魅力について解説。さらに、実際に試乗してみましたので、そのレビューも行いたいと思います。これから購入を考えている方は、ぜひ参考になさってみてはいかがでしょうか。
マツダ ・ CX-5 とは
CX-5とは、マツダが製造、販売するクロスオーバーSUVのことをいいます。2012年、マツダの新世代技術である「SKYACTIVテクノロジー」をフル採用してデビューしました。SKYACTIVテクノロジーとは、エンジンやトランスミッション、プラットフォームを全面的に刷新し、車両全体を最適化するマツダの次世代キーテクノロジーのことを指します。燃焼効率に優れた「SKYACTIVエンジン」、上質な乗り心地を実現した「SKYACTIVシャシー」、軽量・高剛性の「SKYACTIVボディ」が三位一体となって、CX-5は優れたハンドリングや燃費性能を発揮。この性能が評価され、「2012-2013 日本カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得。人気も上昇していってマツダ復活を大きく印象付けたモデルでした。
2代目CX-5、誕生
発売されるやいなや、マツダの看板車種となっていったCX-5。今では現行のマツダ車としては古い部類に入ってきており、モデルチェンジが待たれていました。2016年12月15日、ついにマツダは日本仕様の2代目CX-5を発表。発売は2017年2月2日から開始するとアナウンスされました。従来モデルと同様、ガソリンエンジン車とディーゼル車というラインナップでガソリン車は2リッターと2.5リッター、ディーゼル車は2.2リッターのエンジンが搭載されます。
さらに洗練されたスタイリングが魅力的
もっとも大きく変わったのは、スタイリングでしょう。先代から受け継がれる「魂動(こどう)」デザインをさらに進化させ、新たに「CAR AS ART」というデザインテーマを掲げました。日本古来の美意識を参考にしたとのことで、これまでさまざまなキャラクターラインを配してデザインされていたのをやめて、もっとシンプルにという「引き算の美学」でまとめられたデザインであるとデザイナーは語っています。先代のダイナミックさはそのままに、SUVとしての完成度をさらに高めたデザインといえるでしょう。
新カラーも登場、独創的技術をアピール
マツダはこれまでにも「ソウルレッドプレミアムメタリック」というボディカラーを独自の塗装技術「匠塗 TAKUMINURI」によって実現してきました。職人の手塗りのような濁りのない輝きとシャープな鮮やかさと深みを実現したこのカラーは、マツダのイメージカラーとして今ではすっかり定着しています。新型CX-5にはイメージカラーとして、新色である「ソウルレッドクリスタルメタリック」を設定。光が反射して見える部分(ハイライト)の鮮やかさと光が反射せず影になっている部分(シェード)の深みを際立たせ、魂動デザインをハイレベルなものへと昇華させているのです。
人馬一体の走りを目指したエンジン
先述のように、エンジンはガソリンとディーゼルが用意されています。ガソリンエンジン「SKYACTIV-G」は13.0という高い圧縮比によって軽快な走りを実現、もちろん優れた燃費性能も持ち合わせているのが特徴です。2.5リッターエンジン車は、さらにエンジンの軽量化や振動・こもり音を低減するバランスシャフトを採用することにより、上質な乗り味をドライバーに提供します。
そしてディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」は、燃焼室やピストンの形状を最適化することにより、効率の良い燃焼を実現。力強いトルク特性と高回転域の伸びの良さなど高いパフォーマンスを発揮するエンジンへと熟成が図られました。またナチュラル・サウンド・スムーザーやナチュラル・サウンド・周波数コントロールを採用することにより、高い静粛性や耐振動性能を実現している点もトピックです。
目玉技術はやはり「GVC(G-ベクタリングコントロール)」
様々な新技術が採用されている昨今のマツダ車で一番の目玉技術といえば「GVC(G-ベクタリングコントロール)」でしょう。これはドライバーのステアリング操作に応じて、エンジンの駆動トルクを変化させるものです。従来は別々に制御されていた前後方向と横方向の加速度(G)をクルマが統合制御することにより、4輪の接地荷重を最適化してスムーズな車両の挙動を実現しました。
筆者もこの技術が搭載されたアクセラに試乗したことがありますが、ステアリングのブレを少なくする制御がとても自然で、思ったラインをクルマがきちんとトレースしてくれるところに運転の悦びが感じられ、驚きを禁じ得ませんでした。特に雪道などで高い効果を発揮するといわれているこのGVC、CX-5全車に標準装備されるということでドライビングへの期待が高まります。
【 試乗 レポート】実際の走りはどうか?インプレッション
それでは新型CX-5を実際に触れてみると、どうなのでしょうか。早速試乗してみましたので、レポートしたいと思います。
今回試乗したのは、ディーゼルの最高グレードとなる「XD L Package」の4WD車です。まずはエクステリアですが、前の物に比べて精悍さが増しました。サイドのキャラクターラインは絞り込まれ、マツダのいう「引き算の美学」で完成されたエクステリアを十分堪能できます。素直に「かっこいい」と誰もが思えるフォルムでまとまっているといえるでしょう。SUVにありがちな腰高感があまりなく、どっしりとしているのも魅力的です。
インテリアは、ようやく今どきのマツダらしい高い質感を得ることに成功しました。ステアリングの太さも絶妙で、手にしっかりと馴染んでくれます。またシートも背中をきちんと面で支えてくれてサイドのサポートもたっぷりあるため、クルマとの一体感が味わえるのも特筆すべき点です。デザイン上Aピラーがかなり寝ていますが、圧迫感などは特に感じられません。リアも十分にスペースがあるので乗降性にも優れており、ゆっくりくつろげるのが嬉しいポイントです。あとリアにも装備されたシートヒーターは快適性がプラスされ、まさに至れり尽くせりといったところ。ワンランク以上に車格がアップした印象です。
リニアに反応するディーゼルエンジンは、運転が楽しくなる
エンジンを掛けて走り出した瞬間から、このクルマの出来のよさは伝わってきます。19インチという大径のタイヤを装着しているにもかかわらず、段差の突き上げの柔らかさには驚きました。またガラスの板厚を上げたことやピストンピン部分にキャンセラーを内蔵していることから、ディーゼル特有の嫌な振動や音が見事に抑えられています。今までディーゼルを嫌がっていた方も、このエンジンのメカニズムがわかると興味を示すに違いありません。
エンジンについては、特にディーゼルのセッティングは見事で、アクセルの踏み具合にリニアに反応するようになりました。これまでは踏み始めてから若干もたつきがあり気になっていましたが、今回の仕様はガソリンエンジンのようなクイックレスポンスで走りを十分に堪能できます。ディーゼルを選ぶ理由が、またひとつ増えた感じです。
ステアリング、アクセルともにマツダらしく遊びが少ないので、人馬一体感はこのSUVでも愉しむことが可能です。技術的目玉であるGVCは修正舵が少なく、快適なステアフィールを提供。剛性の高いシャシーとはベストマッチングという印象です。
装備、技術的にも充実。今一番「買い」の1台
こうしてCX-5に乗ってきましたが、商品性はとても高いレベルにあるといえます。日産・エクストレイルやスバル・フォレスターという強豪ひしめくこのジャンルでも、CX-5はとても魅力的に映るでしょう。ついに全車速域対応のACC(アダプティブクルーズコントロール)も装備されましたので、より安全にドライビングができるのも新型CX-5の強みです。こうした意味からも、今一番「買い」の国産SUVということができます。