Photo By Marc Palumbo
第一次世界大戦の空襲で瓦礫の山となったイギリス。
街を立て直してくれる人がいない中、自分たちの手で作りなおそうという機運が生まれました。
それがDIY(Do it Yourself)の始まりだと言われています。
オープンデザイン ―参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books) より
やがて、時代が変わり現代のDIYと言えば、当時のような生活の必然性という要素は薄くなりました。代わりに理想の実現のためといったニュアンスが強くなってきているのではないでしょうか。
未来の常識は自動車も自分たちの手で作る!?
Photo By Startup Stock Photos
DIYで作るものと言えば、棚や机などといった単純な機構のものがほとんどです。これまでは複雑な機構、例えば車など、はDIYで作るにはハードルが多すぎました。
しかし、今回紹介する「ローカルモーターズ」というアメリカの会社はなんと、ユーザーと一緒に作り上げるをコンセプトにしているのです。
「ユーザーと一緒に作り上げる」を実現できるのは3Dプリンターのおかげ
2007年にジェイ・ロジャースが創業したローカルモーターズ。ここは3Dプリンターを活用することでユーザーと一緒に車を作ることを実現しています。
3Dプリンターを使って本当に自動車が作れるのか?
実際に2015年1月の米デトロイト、北米国際自動車ショー2015では会期中の6日間で1台の電気自動車を作り上げ、観衆を驚かせました。
会場に持ち込んだ3Dプリンターで製作を始め、会期終了までに2人乗り電気自動車「ストラティ」が完成し、会場内を走行しました。
この3Dプリンターはオークリッジ国立研究所とシンシナティ株式会社が開発した巨大高速3Dプリンターです。強度を出すためにストラティのボディ部分は212層で構成されています。
しかも、ボディの出力は2日で終わりました。残りの4日はステアリングやホイール、サスペンション、電気モーターの組み立てに費やされました。
ローカルモーターズ流の車の作り方
ローカルモーターズがすごいのは、自動車をDIYするために自動車製作キットを販売しているわけではない点です。
ここからはどのようなプロセスでユーザーと一緒に作り上げているのかを紹介します。
1.世界120カ国の人々と共に構想を練る
Photo By Nicolas Raymond
ローカルモーターズには、自動車ファン、エンジニア、デザイナーなど、プロ、アマを問わないコミュニティが存在します。
しかもこのコミュニティには120カ国から5000人以上の人が所属しています。つまり、一緒に作り上げるとは、
ローカルモーターズ対ユーザー
だけでなく
ユーザー対ユーザー
の関係でもあるのです。
2.プロによる技術的検証
ただ、どれだけの規模の人数が集まっても人数がそろうだけでは自動車は作れません。
実際に製造できるかを技術的に検証する必要があります。
そこはローカルモーターズの社員が行います。
3.購入者が自ら自分の車を組立に行く
コンセプト・デザインの決定と、実現性の確認。これらが成立したところで組立を始めます。
しかし、車を製作した経験があるユーザーなんてほとんどいません。そこで、ローカルモーターズの熟練工が技術指導やノウハウを伝授してくれます。
これこそまさに、ユーザーと一緒に車を作るです。
4.耐久性の確認(MOD)
最後に、何より重要な車の耐久性、安全性についてはユーザーローカルがチェックします。そのため、エンジニアであり、本格的なレーシングドライバーでもある社員が存在します。
それと同時に最終的な調整や修正もされます。こうしてイメージ通りの安全で動く自動車を作ることができるのです。
DIYでハイクオリティなものを作る
ローカルモーターズの鍵はこうしてみてみると3Dプリンターにあるように感じるかもしれません。
しかし、ローカルモーターズの本当の強さはそこだけではないのではないでしょうか。
本当の強みは、ユーザーのイメージをブラッシュアップするコミュニティの存在と、そこで生み出されたアイディアを実現させる技術者の存在。この3者が揃っていることこそが本当の強みなのではないでしょうか。
なかなか真似できるものではありませんが、いつか世界でこんな風に自動車も3DプリンターでDIYする日が来るかもしれません。