排ガス不正操作に揺れるVWのニュースを時系列でまとめてみた

     
   

9月19日、ドイツの大手自動車メーカー・フォルクスワーゲン(以下VW)が、アメリカの排気ガス規制をクリアするため、不正なソフトウェアを搭載していたことが分かりました。2015年の上半期、VWが世界の首位に付いていたトヨタを抜いて販売台数一位になったというニュースに水を差し、世界を驚かせた大きなニュースです。

それから約一週間、目まぐるしく新たな情報が発覚するVWのニュースを、時系列順にまとめてみました。

目次

VW不正事件
1. アメリカでの不正発覚
2. CEOの辞任
3. 飛び火する疑惑
4. 調査の手はVW以外にも…
5. 新CEOが決定
6. 続々と発覚する新事実

VWに関する過去の主な出来事
1. VWのお家騒動
2. スズキとの提携解消
3. VWの新車販売台数首位報道
4. 日本法人社長、突然の辞任

アメリカでVWが排ガス不正を認める-2015年9月18日


Photo By Ian Sane

ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW )は、米国の排気ガス規制に関する検査での不正行為を認めた。巨額の制裁金に加え、刑事訴追を受ける可能性も出てきた。
2015年9月18日-ブルームバーグ

アメリカには「排気ガス規制」という制度があります。これは、排気ガスに含まれる物質が、一定の条件をクリアしないと商品として販売できないというものです。

今回の事件は、大手自動車メーカーのVWがそのテストをクリアするために「試験場で性能が検査される場合にだけ有害物質の量を減らすことができる」というソフトウェアを搭載していたことが発覚したというもの。

実際に道路を走行する場合、有害物質の排出量は基準の40倍にもなるというのが驚きです。

VWと傘下の独アウディで2008年以降に販売された小型車「ゴルフ」、中型セダン「パサート」などのディーゼル5車種が、排ガス試験をクリアするため検査中だけ排ガスを減らす違法なソフトウエアを使っていた。
2015年9月22日-日経新聞

このソフトウェアが搭載されていたのは、2008年から今年にかけて販売されていた「ゴルフ」「ジェッタ」「ビートル」など計約48万2千台にも及び、今後アメリカ環境保護局は全台のリコールを命じると予想されています。

フォルクスワーゲンは調査の結果、世界でおよそ1100万台にその不正なソフトが搭載され、排ガスのデータに影響があることが分かったと発表しました。
2015年9月22日-NHK

環境保護局は、「違法な行為で人々の健康を脅かす」と非難。それに対しVWは、不正があったことに謝罪し、22日の調査で不正なソフトウェアを搭載した車は更に多い1100万台に上ることが判明しました。

その22日、VWのCEO・ウィンターコルン氏はホームページ上のビデオ声明で陳謝しました。そして、「ほんの数人の過ちによって、60万人の全従業員の懸命かつ誠実な仕事ぶりが疑われるようなことはあってはならない」と組織ぐるみでの不正を否定しました。

フォルクスワーゲンCEOの辞任発表-2015年9月23日

独フォルクスワーゲン(VW)(VOWG_p.DE)のウィンターコーン最高経営責任者(CEO)は、米排ガス規制逃れが発覚したことを受けて、辞任すると発表した。
2015年9月23日-ロイター

その翌日である23日、フォルクスワーゲンのCEO・ウィンターコルン氏は、排ガス規制から逃れたことを受けて、辞任を発表しました。

ウィンターコルン氏は、自社でこのような大規模な不正があったことにショックを受けていると述べ、VWは心機一転、再出発が必要だとし、自ら退くことを決意したそうです。VWは、25日開催の取締役会議で新経営陣の提案が提出されるとしています。

関係筋によると、独フォルクスワーゲン(VW)(VOWG_p.DE)は25日、ディーゼル車の排ガス試験をめぐる不正発覚で最高経営責任者(CEO)を引責辞任したウィンターコルン氏の後任に、傘下ポルシェのトップ、マティアス・ミューラー氏(62)を指名するとみられる。
2015年9月24日-ロイター

前CEOマルティン・ヴィンターコルンとは…(Wikipedia)
新CEOマティアス・ミュラーとは…(Wikipedia)

飛び火する疑惑ー2015年9月24日


Photo By Marcus Balcher

クリーンディーゼル車を得意とするマツダも、連想で株価が急落。
2015年9月24日-産経ニュース

今回のVWの不正事件。実は、日本の会社も影響を受けています。

マイナスな影響を受けたのは自動車メーカーのマツダ。昨年発売した「デミオ」を筆頭に、ディーゼルエンジンを搭載した車を増やし、評価を上げてきていたところでした。

しかし今回のVWの不正で、ディーゼル車を搭載した車を多く販売しているマツダの株価も急落してしまいました。これでは、VWの巻き添え。マツダはヨーロッパの市場で比較的強い立場にあったということもあり、今後のヨーロッパがディーゼル車をどう捉えるか、胆を冷やす状態が続くでしょう。

反して、VWに一時的に抜かれていたトヨタは再び首位へ。しばらくは、「世界のトヨタ」が続きそうです。ただ、世界1位の販売台数になった途端、米国のリコール問題に悩まされたトヨタ自動車。再び何か騒動が起きないか不安な一面もあります。
【インフォグラフィックス】トヨタ首位転落!?報道によってVWと販売台数1位が異なる理由を解説

調査の手はVW以外にも…-2015年9月24日


Photo By Graham C99

VWの不正が最初に発覚した地であるアメリカでは、ディーゼル車を販売している他の自動車メーカーの車も調査されることが決まりました。

欧米メディアによると、米環境保護局(EPA)は、現地でディーゼル車を販売する独BMWや独ダイムラー、米ゼネラル・モーターズ(GM)など、VW以外の車両についても規制逃れのソフトが組み込まれていないか、調査に乗り出す方針を固めた。
2015年9月24日-産経新聞

さらにVWの事件を受け、ドイツのドブリント運輸大臣は他の自動車メーカーも不正をしていないか調べる方針を明らかにしました。

独自動車専門誌「アウトビルト」は同日、国際的な調査機関による道路での試験で、独BMWのディーゼル車の排ガスからも欧州基準を大きく上回る規制物質が検出されたと報じた。
2015年9月25日-ハフィントンポスト

ここで、ターゲットになったのはまたも大手自動車メーカー「BMW」。ドイツの自動車専門誌アウトビルトが、国際的な調査機関による調査で、BMWのディーゼル車からも欧米基準を大きく上回る有害物質が検出されたと発表したのです。

BMWはその結果を否定。その報道を受けて、同社の株価も10%近く低下しました。

VW新CEOが決定するも下がり続ける株価…-2015年9月25日

25日、VWはウィンターコルン氏の後継人として、傘下であるポルシェのCEO・マティアス・ミューラー氏を指名、監査役過半数の支持を得て就任しました。ミューラー氏はポルシェのCEOに就任する以前、VWの傘下アウディでも重要な役職に勤めていたそうです。

欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)は25日、排ガス試験の不正問題で引責して辞意を表明したマルティン・ヴィンターコーン社長(68)の後任に、VW傘下の独ポルシェ社長、マティアス・ミュラー氏(62)を充てる人事を決めたと発表した。同日付で就任した。
2015年9月25日-日経新聞

現時点では、他の自動車メーカーでの違法装置の使用は確認されておらず、今後さらなる調査が進められる予定です。

また、今回の問題でVWの株価は30%以上下がり、それが影響してドイツの株式市場も全体的に降下。ドイツ経済全体が騒動に巻き込まれています。

続々と判明する新事実

それ以降も様々な情報が明らかになってきています。

指摘されていた問題・警告されていた問題-9月27日

独フォルクスワーゲン(VW)による排ガス試験の不正問題をめぐり、2011年時点で同社内で違法な規制逃れの問題が指摘されていたことが分かった。
2015年9月27日-日経新聞

なぜなら、氏が就任した後の2011年に一度、社内で問題が指摘されていたためです。また、ちょうど氏が就任した年には不正ソフトを開発したメーカーから書面での警告が送られていたことが明らかになりました。

VW向けにソフト開発を手がけていた独大手部品メーカーのボッシュが2007年、VWに対し、規制逃れのためにソフトを市販車に搭載するのは違法だと警告する文書を送っていたと、独メディアが27日に報じた。
2015年9月27日-朝日新聞

不正は2年前にすでにアメリカのNPOの調査で判明していた-9月27日

フォルクスワーゲンの排ガス不正問題で、アメリカの環境NPO(民間非営利団体)が、2年以上前に、ディーゼル車を検査した際、問題を発見していたことがわかった。
2015年9月27日-FNN

今回発覚したVWの不正ですが、実は2年前にアメリカの環境保護系のNPOが気づいていました。しかし、米ウェストバージニア大学で今回の騒動が発生するまで表沙汰になることはありませんでした。

独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が違法ソフトで排ガス規制を逃れていた問題で、発覚のきっかけとなった実験を行った米ウェストバージニア大に注目が集まっている。
…中略…
この結果を知った米環境保護局(EPA)が改めて調査結果を確認して、VWを追及。VWは当初、路上走行時に浄化機能が低下する原因は「技術的な問題」にあるなどと釈明していたが、EPAが2016年型製品の承認を出さないと警告したため、違法ソフトによる不正行為を認めたという。
2015年9月25日-産経ニュース

始まりは10年前から!?-9月29日

ドイツのDPA通信は28日、ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が一部ディーゼル車の排ガス規制逃れのための違法なソフトウエア導入を決めたのは2005~06年ごろだったと報じた。
2015年9月29日-毎日新聞

今回発覚したVWの不正ですが、実はかなり前から計画されていた可能性があります。今回の騒動で辞任を表明したマルティン・ヴィンターコルン氏ですが、彼が就任したのは2007年。つまり、氏の前任者の時代から不正が行われていた可能性が出てきました。

そのため、ヴィンターコルン氏のあずかり知らないところで事態が進行していたと考えることができますが、そうではありません。

過去にはこんな事件も…


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現在進行形で新たな事実が発覚したり、情勢が変動している本事件。ここで一度、VWに関する過去の出来事をまとめてみました。

VWのお家騒動

独フォルクスワーゲン(VW)でマルティン・ヴィンターコーン社長(67)の任期延長を巡る“お家騒動”が表面化した。独誌が最高実力者のフェルディナント・ピエヒ監査役会長(77)が社長の任期を延長しない考えだと報道。だが、ピエヒ氏と同じオーナー一族のポルシェ家などから社長支持の声が広がり混沌としてきた。
2015年4月13日-日経新聞

今年の4月、VW社長・マルティン・ヴィンターコーン氏の任期延長に関するお家騒動が明らかになりました。両者はVWの礎を築いたフェルディナント・ポルシェ氏の孫であり、VWの株の過半を握っているため重要な存在です。

しかし、4月25日、権力闘争に敗れたピエヒ氏は辞任。経営から身を引く形で終着しました。

スズキとの提携解消


Photo By M 93: „Dein Nordrhein-Westfalen“

2015年の8月30日、スズキの鈴木修会長は、VWとの資本業務提携の解消を発表しました。よって、VWが包括していたスズキの株が返還されます。スズキはこれにより、2400億円を失うことになりますが、鈴木会長はこの結果に満足しているとのこと。

もともと提携は、スズキはVWにインドなど新興国向けの低価格小型車のノウハウを提供、VWはスズキに環境技術を提供し、新興国向けの低価格小型車をVWに供給することが目的とされていました。

スズキ株式会社(以下、スズキ、本社:静岡県浜松市)とフォルクスワーゲンAG(以下、VW、本社:ドイツ連邦共和国ウォルフスブルグ市)は本日、包括的な提携関係を構築することで合意し、両社代表が基本契約書に署名した。
2009年12月9日-スズキ株式会社

しかし、しばらくして事態は一転。まともな技術支援が行われない、スズキが知らされていなかった制約の判明。VWがスズキを「財務的、経営方針上、重大な影響を与える事ができる会社」として位置付け、ゆくゆくは自社の傘下に収め、世界販売台数一位を狙っているなどの疑惑が浮かび上がりました。
その結果、スズキはVWとの提携解消に動き出します。

当社は、平成21年12月9日にフォルクスワーゲンAGとの間で包括契約を締結しましたが、2年弱の期間の協議を経て、本日、下記の理由によりフォルクスワーゲンAGとの業務提携及び相互資本関係を解消することを取締役会で正式に決定したことをお知らせいたします。
2011年9月12日-スズキ株式会社

そして2015年8月30日、ついに国際仲裁裁判所の仲裁手続きが完了し、提携が解消されました。

今後、VW以外と資本・業務提携の可能性はあるか。
 鈴木会長「自立して生きていくことを前提に考えていきたい」
2015年8月30日-日経新聞

会見では、「提携を解消したのとは別の分野で、協力関係を築く可能性はあるか」という質問に対し、鈴木氏は「離婚したひととまた再婚することはないだろう」と述べています。

まさに今回の事件の前の絶妙なタイミングでの解消の完了。さらに、所有していたVW株もきっちりと購入金額よりも高く売却しました。

スズキ:VW株をポルシェHDに売却、売却益は約367億円
2015年9月26日-Bloomberg

VWの新車販売台数首位報道

以前、【インフォグラフィックス】トヨタ首位転落!?報道によってVWと販売台数1位が異なる理由を解説でも解説したように、今年の5月VWが「世界のトヨタ」を抜き、世界販売台数一位に躍り出たというニュースがありました。

中国や欧州で販売台数を着々と伸ばしていたVWですが、今となっては過去の栄光。しばらくは、トヨタの首位が続きそうです。

日本法人社長、突然の辞任

世界の新車販売で今上期、フォルクスワーゲンがトヨタを抜いて首位奪還というニュースが流れた矢先に、VW日本法人の社長が突然辞任することが明らかとなり、「VWに何が起きたのか?」と、輸入車業界で大きな話題を呼んでいる。
-2015年8月18日-ダイアモンドオンライン

VWが首位に躍り出た矢先のことです。今年の7月31日付けで、VW日本法人社長である庄司茂氏が辞任を発表しました。これはまさに突然のことで、理由も「本人の意向」とされていますが、どうやらVWのお家騒動の余波のよう。

また、輸入車ブランド別販売ナンバーワンを保ってきたVWが、今年の上半期でメルセデス・ベンツに抜かれたということも関係がありそうです。ドイツ本社は、これに対し下半期の販売計画をゴリ押し。それに反発したことで、実質解任されたともされています。

庄司氏は日本輸入組合の理事長に就任していたということもあり、その席が急に空席になった日本輸入組合は大きな打撃を追いました。

まとめ

一時は世界のトップに躍り出たVWでしたが、案外どんなところに落とし穴があるのか分からないというもの。

今回のテストの結果はアメリカ環境保護局のものですが、これを受け、世界各国の調査が始まります。VWが世界の自動車メーカーに与えた不安は計り知れません。

VW排ガス不正問題 欧州でも不正 EU、各国に調査促す
2015年9月25日-産経新聞

VW不正、各国が次々調査=インドや豪、ノルウェー
2015年9月25日-時事ドットコム

フォルクスワーゲンのディーゼル・エンジン問題 韓国が調査に動き出す
2015年9月25日-Autoblog

まだまだ新しい情報が登場しています。VW以外も含め、今後どのような展開になるのかしっかりと注視していきましょう。

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