ハイブリッド専用となったアコード、北米をみすえる世界戦略車の今

ハイブリッド専用となったアコード、北米をみすえる世界戦略車の今
     
   

かつてアコードは「ユーロR」や「SiR」を中心に、スポーティな大人のセダンとして高評価を得ていました。そんなアコードを知る人からすると、現在販売されているアコードには違和感を抱かれるのではないでしょうか? 

2016年現在販売されているアコードは「HYBRID EX」と「HYBRID LX」の2タイプとなり、どちらもハイブリッドのみのラインアップとなっています。トランスミッションはもちろんATのみで、MTモデルは存在しません。

かつての「ユーロR」を知る方からすればずいぶん残念に見えるラインアップかもしれません。そこには、アコードという車が北米市場をはじめとした世界中で販売される戦略車として重要視されていることが関係しています。

なぜそんなことが言えるのでしょうか?それは、現在アコードのライバルと呼べる車種を見るとわかります。

アコードの最大のライバル「カムリ」

現在トヨタの4ドアスポーツセダンといえば、6MTを搭載し限定販売された「マークX GRMN」があげられます。「ユーロR」時代のアコードなら必ずこの車がライバルにあげられたはずですが、現行アコードのライバルはこの車ではありません。

2nd_Toyota_Camry

北米の4ドアセダンとして好調な売れ行きを示し続けるトヨタの世界戦略車「カムリ」(画像上)こそ、現在のアコード最大のライバルです。そもそもカムリとアコードは北米市場では古くからのライバル同士、「ユーロR」のようなスポーツモデルをのぞけば、アコードは以前からカムリを意識してきたのです。

アコード同様ミドルサイズセダンとしてボディサイズを拡大し、アコードと北米で販売競争を繰り広げてきた「カムリ」ですが、ここ数年ある変化が起こっています。北米で大ヒットしたプリウスの存在です。

北米では環境に配慮することが富裕層のステータスとなっているため、ハイブリッドカーであるプリウスは北米の富裕層を中心に爆発的なヒットとなりました。このプリウスの大ヒットを受けて、トヨタはハイブリッドモデルを既存の車種にも採用するようになったのです。

Toyota_Prius_NHW20

2016年5月でトヨタのハイブリッド車は世界累計販売台数が900万台を突破し、トヨタもさらにハイブリッド車の販売比率を延ばす計画を進めています(参考:トヨタ公式サイト)。

この流れも受けてカムリにもハイブリッドを搭載した「カムリ・ハイブリッド」がラインアップされ、カムリ全体の販売比率からみて15%にまで「カムリ・ハイブリッド」の販売台数を引き上げる計画をすすめています。

トヨタとハイブリッド車の分野で闘い続けるホンダもこの動きを黙ってみていることはできず、北米市場の主力セダンであるアコードにもハイブリッドがラインアップされることになったのです。

北米第3のミドルサイズセダン「ヒュンダイ・ソナタ」

はじめは北米で富裕層のステータスとして販売台数を伸ばしたハイブリッド車ですが、その燃費性能や経済性が富裕層以外にも知られるようになり、より安価なハイブリッド車のニーズが高まるようになりました。

そうしたニーズに応えるように登場し、カムリ・アコードに次ぐ第3のミドルサイズセダンとして売り上げを伸ばしてきたのが「ヒュンダイ・ソナタ」です。

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photo by CEFICEFI (CC BY-SA 3.0)

燃費偽装問題や暴走事故でネガティブな印象を持つ方もおられるかもしれませんが、アコードやカムリと比べても安価な価格設定と、上質なインテリア・エクステリアの質感で、完成度の高い4ドアセダンとしてカムリ・アコードに次ぐ売り上げを記録しています。

大きな特徴はその多彩なパワーユニットで、ハイブリッドは当然として、ダウンサイジングターボにディーゼルターボ、極めつけにLPG(天然ガス)とモーターを組み合わせたLPGハイブリッドという車種までラインアップしています。

日本車の揺るぎないブランドイメージや品質にこそ、ソナタは一歩遅れを取っていますが、最新技術を貪欲に吸収・投入してくる勢いや、潔ささえ覚感じる低価格路線の販売戦略には舌を巻きます。

もはやアコードのライバルといっても差し支えのない車でしょう。

ハイブリッドカーメーカーの戦略車となったアコード

ホンダの「NSX」やフラッグシップセダン「レジェンド」は、ご自慢のSH-AWDにモーターを組み合わせた高性能ハイブリッドカーとなっています。

2代目インサイトと3代目プリウスのすさまじい販売競争の例からも、ホンダというメーカーがハイブリッドをいかに重視しているのかがよくわかります。

そんなホンダの意向もあってか、アコードにはPHEV(プラグインハイブリッド)もラインアップされていましたが、500万円台という価格もあり、こちらはわずか283台しか販売されず、ひっそりと姿を消してしまうことになりました。

このようなグレードをホンダが用意したこと自体、ホンダがアコードという車にハイブリッドのイメージを植え付けようとしていることの現れに思えます。

日本でアコードがハイブリッドのみのラインアップとなったのは、ずばりホンダがハイブリッド車に特化したメーカーイメージを築きたいということと、そんなホンダのイメージリーダーとしての役割が、世界戦略車であるアコードにも求められているからです。

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photo by DY5W-sport(CC BY-SA 3.0)

最後に現行アコードハイブリッドの簡単な紹介ですが、スポーティな高級セダンとして、「ユーロR」時代とは一線を画する高級車に。内装・外装ともに質感が増し、若々しい雰囲気と大人の雰囲気をあわせ持ち3,800,000円からという希望小売価格も納得できる車となりました。

あとは高級ハイブリッドスポーティセダンとして確たるブランドイメージを築くことが、アコードの課題といえるでしょう。

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