春と言えば進学や就職などで周りの環境ががらりと変わる季節。新生活を始める上で、車が必要になる方もいるのでしょう。
「・・・でも他人と同じ車選びはしたくない」今回はそんなわがままな要望に応えるべく「50万円から始めるっちょっとディープでマニアックな中古車たち」をご紹介します。通好みのクルマで新しいカーライフを始めてみませんか。
いすゞ「ビ-クロス」
まず一台目は、いすゞ「ビ-クロス」。スペシャリティカーとSUVのいいトコ取りをしたようなフォルムが特徴です。1993年の東京モーターショーにて、いすゞが発表したコンセプトカー「ヴィークロス」をもとに市販化したのが「ビ-クロス」です。
両者の名称が若干違うのは、いすゞの社員が当時の運輸省へ型式認可申請をする際に、本来「ヴィークロス」と表記すべきところを「ビークロス」と間違えて書類に記入したことによるものと言われています。こんなエピソードも、エンスー心をくすぐるポイント。
同社のコンセプトカー「4200R」なども手掛けたサイモン・コックス氏のデザインによるエクステリアは、他のどのSUVにも似ていない、躍動的な印象です。インテリアは四駆にありがちな泥臭さを徹底的に排除し、都会的な雰囲気にまとめられています。
こう見ると一見軟派な車にも見えますが、ベースがビッグホーンということもあり、オフロード性能は高レベル。 サスペンションには、KYBと共同開発した別体式ショックアブソーバーを採用。こだわりが光ります。人と違うSUVを探している方には、おすすめの車です。
シトロエン「シャンソン」
二台目は、フランスの自動車メーカー、シトロエンが生産したコンパクトカー「シャンソン」です。日本以外では「サクソ」というネーミングで販売されていました。商標権の問題上、日本では発売当初、この名前を使用することができず、やむなく「シャンソン」という名前を付けられました。その後、使用許可がおりて「サクソ」と改名。
おすすめのグレードは「シャンソン」を名乗っていた時代の「SX」または「V-SX」。「SX」は3ドア、「V-SX」は5ドアのハッチバックになります。シトロエンといえば、油圧を用いたハイドロニューマチックサスペンションが売りのひとつですが、このシャンソンはコンベンショナルな金属バネ式のサスペンションです。
乗り心地はハイドロのようにソフトでしっとりしており、この車がただのコンパクトカーではないことを伺わせます。シートの造りは、フランス車らしいしっかりとしたクッションのもの。ロングドライブでも疲れにくいでしょう。
エンジンは1,600ccの直列4気筒。これに3速のオートマチックが組み合わされため、高速走行時は高回転になりややうるさく感じる場合も。しかし「これがこの車の持つ味なんだ」と妙に納得できてしまうのが、シャンソンの不思議な魅力。
「ヴィザ」や「AX」といった祖先を持つ「シャンソン」。フランスでは、実用車として人気でしたが、日本ではあまり見かけることがありません。コンパクトなバネサス・シトロエンの奥深さを堪能したい方には、打って付けの希少な一台です。
プジョー「306」
1994年に日本で発売が開始された、プジョー「306」。フェラーリ「456GT」やフィアット「プント」などを手掛けたイタリアの名門カロッツェリア「ピニンファリーナ」が携わった一台です。
エクステリアデザインは、くさび形のウェッジシェイプが効いたもので、クリーンな印象を醸し出しています。豊富なバリエーションはもちろんのこと、3ドア&5ハッチバックやブレークと呼ばれるワゴン、カブリオレも用意されており、カブリオレはピニンファリーナの工房で生産されていました。
おすすめは、廉価グレード「スタイル」の5速マニュアル車。1.8リッターエンジンは最高出力100馬力と若干非力なものの、エンジンの回転を上げてシフトアップをしてやれば十分スポーティな気分を味わうことができます。
わずか1,090kgの軽量な車重で、ワインディングロードなどでの楽しさはピカイチ。この車には、かつてラリー界を席巻した、プジョーらしい走りへの情熱が詰まっています。ボディは大変扱いやすい「5ナンバーサイズ」。それにも関わらず、室内は広々としており、内装の操作系もシンプルで扱いやすいです。
廉価グレードでありながら、安っぽさを感じることはありません。お手頃なプジョーとしては「206」もありますので、中古車のタマ数的には「306」の方が圧倒的に少ないです。それだけに良い車を見つけるのには苦労しますが、所有する喜びが感じられる車です。「205」から進化した「ネコ脚」をリーズナブルに堪能できるモデル。
ルノー「ルーテシア」
1990年から発売が開始された、ルノー「ルーテシア」。日本国外では「クリオ」と呼ばれる、ルノーのベストセラー・コンパクトカーです。 それまでの「5(サンク)」の後継モデルとしてデビューしました。初代モデルは、1991年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
おすすめは、初代モデルであれば最上級グレード「バカラ」、二代目モデルであれば「ルノースポール2.0」。バカラは、「パリの小さな高級車」というキャッチフレーズにて販売されたグレードで、本革シートやウッド調パネルが標準装備されており、アルミホイールも専用デザインです。
1.8リッターエンジンは最高出力が88馬力とアンダーパワー気味ですが、4速オートマチックと相性の良いこのエンジンは高速クルーズが実に快適です。 一方、「ルノースポール2.0」は、走る喜びを全身で味わえるモデル。127馬力を絞りだす2リッターエンジンを、5速マニュアルで扱う楽しさ。1,060kgという軽い車重。ホットハッチとは、まさにこの車のためにある言葉です。
コーナーをひらりひらりとクリアしていくと、気分はさながらジャン・ラニョッティ。ちょっと早起きして、ワインディングに行きたくなるような車です。高級感や走りを楽しみたい方には、ルーテシアはピッタリ。
マツダ「ランティス」
「スポーツボディ」のキャッチコピーで1993年にデビューした、マツダ・ランティス。1996年の衝突安全基準にいち早く対応したそのボディは剛性感にあふれ、走りの性能面でも好印象をもたらしています。
ランティスには4ドアクーペと4ドアセダンが用意され、4ドアクーペがドイツで、4ドアセダンが日本でデザインされました。この4ドアクーペはアスティナの後継車となり、海外ではマツダ「323F」のネーミングで販売されていました。
4ドアクーペは、ツーリングカーレースにも出場。目立った成績は残していませんが、ファンの記憶には今も残る一台です。当時のランティスの2リッターモデルには、他のマツダ車と同様に「V6エンジン」を搭載。燃費が何よりも優先される現代では考えられないほどの贅沢な造りで、そのトルク特性はライバルを凌駕したものとなっていました。
おすすめは、4ドアセダン「タイプR」の5速マニュアル車。4ドアクーペよりもタマ数が少なく、ノーマル車が多いのが特徴です。16インチという大径のタイヤをさらりと履きこなすフットワーク、V6エンジンの滑らかな回転を4ドアクーペよりも高い剛性のセダンボディで味わうことができます。
今回は、ちょっとマニアックで楽しくなるような中古車5台をレポートしました。新しいシーズン、あなただけの一台を見つけて新しいカーライフをエンジョイしませんか?ひょっとしたら、人生が豊かになるかもしれません。