9月に開催されるフランクフルトモーターショー2017において、フェラーリによる新型オープンスポーツクーペ「ポルトフィーノ」のワールドプレミアが実施されることとなりました。今回はポルトフィーノについて紹介するとともに、フェラーリという自動車メーカーについても合わせてお送ります。
フェラーリとは
当時イタリアの自動車メーカー「アルファロメオ」に在籍していたレーシングドライバー「エンツォ・フェラーリ」が独立。仲間と共に立ち上げたレースチーム「スクーデリア・フェラーリ」が、高級スポーツカーの名門「フェラーリ」のはじめです。立ち上げ後、数々のレース活動で実績を積み上げていくフェラーリに資金不足の壁が立ちはだかり、そのためフェラーリは自社レーシングカーをデチューンした市販車を販売するようになります。
フェラーリのブランドイメージや品質の高さも相まって、高価格ながら順調に販売台数を伸ばしていったフェラーリの市販車ですが、根っからのレース屋であるエンツォ・フェラーリはそれが気に入らず、乗り心地を重視した市販車を買う顧客を馬鹿にし、自社の市販車を蔑んでさえいたといわれています。
モータースポーツへの参戦には「ホモロゲーション」という規定にクリアすることも必要です。ベース車両の排気量や生産台数などのクリアすべき数値が設定されており、フェラーリもこのホモロゲーションをクリアする必要に迫られ、フェラーリはイタリア最大の自動車メーカー「フィアット」と提携を結ぶことになります。その後フェラーリは安定のためフィアットの傘下に入り、エンツォ・フェラーリはレース部門のスクーデリア・フェラーリに専念。フェラーリの市販車部門ではフィアット主導での開発が進められるようになり、V6エンジンを搭載していた「ディーノ」をはじめ、数々の名車が世に送り出されることになります。
フェラーリのV8エンジンとV12エンジン
かつてエンツォ・フェラーリは「12気筒エンジン以外のストラダーレ(市販車)はフェラーリと呼ばない」と公言していたといわれています。しかし、エンツォ・フェラーリの最愛の息子だったディーノはV6エンジンの必要性を予見していました。ディーノはわずか24歳にて急逝してしまうのですが、彼が残したV6エンジンは実際のレースで目覚ましい活躍を果たします。やがて市販車でもV6エンジンを搭載したモデルの販売が開始。その車こそが、現代まで続く「ピッコロ(小型)・フェラーリ」のはじまりとなったディーノです。このディーノは販売面で大ヒット、市販車開発の主導権を握っていたフィアットはこれを受けV8エンジンを搭載したディーノの後継車種を開発・販売。以後、フェラーリではフラッグシップであるV12エンジン搭載モデルの他、入門モデルであり、ディーノの系譜を受け継ぐV8エンジン搭載モデルを、ラインアップし続けることになるのです。
新型フェラーリ・ポルトフィーノとは?
今回紹介するフェラーリ・ポルトフィーノは、4人乗りのFRオープンスポーツクーペ。V8ターボエンジンを搭載する「ピッコロ・フェラーリ」の系譜の1台であり、「フェラーリ・カリフォルニアT」の後継車種になります。名前の由来はイタリアでもっとも美しいといわれる港町「ポルトフィーノ」から。外装色には専用「ロッソ ポルトフィーノ」も設定しています。2ドアクーペながらリアシートも備えており、FRレイアウトを採用しているためトランクの広さにも余裕があります。600馬力という大パワーやそのアグレッシブなエクステリアとは裏腹に、旅行なども視野に入れたGT(グランドツーリング)カー、つまり長距離移動をしても疲れない、快適な乗り心地も重視されたモデルになります。
フェラーリ・ポルトフィーノのエクステリア
フェラーリ・ポルトフィーノのエクステリアにおけるトピックは、ポルシェ初の電動リトラクタブルハードトップを採用したこと。そして、オープンカーでありながら、ファストバックスタイルを実現したということです。ファストバックスタイルとは、ルーフからトランクに掛けて一体的に流れるようなデザインになされているスタイルのことで、これにより通常の3ボックスセダンに比べてよりスポーティなスタイリングを演出できます。フロントフェイスには大きく口を開けたエアダクトを備え、そこから抜けるエアの出口が、フロントタイヤのすぐ後ろからキャラクターラインを形成。ワイド&ロー、ロングノーズショートデッキを採用し、古典的なFRオープンスポーツの教科書に則りつつ、フェラーリらしいアグレッシブなエクステリアを作り挙げています。
フェラーリ・ポルトフィーノのインテリア
ダッシュボードの中央には10.2インチのインフォメント・スクリーンを配置。乗り降りを考慮し下部を切り取ったようなステアリングやスイッチ類は、フェラーリらしいレーシングカーのようなデザインを踏襲しています。オープン時の風切り音を低減し、走行時に流入してくるエアフローを30%も低減させるウィンドウディフレクターを装備。ルーフの開閉に関わらず、快適性を向上させるよう配置されたエアコンシステムも備えています。新たに採用された電動シートの恩恵によりリアの足元のスペースを増加、後席の居住性を向上させています。シャシー自体も新設計となる「フェラーリ・ポルトフィーノ」、軽量化を実現しつつ、ねじれ剛性もアップさせています。
フェラーリ・ポルトフィーノのスペック
エンジンは3,855cc直噴V型8気筒ターボエンジンを採用。先代フェラーリ・カリフォルニアTとベースを共有しつつコンロッドやピストンからソフトウェアまで様々な改良を実施。結果最大出力で40ps、トルクで0.5kgf・mの向上を果たし、最大出力600ps 7,500rpm、最大トルク77.5kgf・m 3,000~5,250rpmという大パワーを獲得しました。前述した、新設計のシャシーによる軽量化もあり、0~100km/h加速はわずか3.5秒、フェラーリ・カリフォルニアTより0.1秒タイムを短縮しています。最高時速は320km/h以上。前後重量配分は46:54を実現。欧州複合モード燃費は9,5km/Lを実現しCO2の排出量も削減、環境性能にも配慮されています。
フェラーリ・ポルトフィーノは用途を選ばない高性能GTスポーツ
フェラーリ・ポルトフィーノはディーノから続く「ピッコロ・フェラーリ」の系譜の1台であり、フェラーリのエントリーモデルです。しかしながら、その性能は0~100km3.5秒を誇り、快適性・利便性まで兼ね備えている高性能GTスポーツ。通常の自動車メーカーのエントリーモデルとはまるでかけ離れた車です。燃費を考えれば旅行にも通勤にも使えそうなこのモデル、フェラーリのさらなる顧客獲得を担う、意欲作といるでしょう。