「ロービーム」はもう時代遅れ!? 最新の「ハイビーム」技術とは

「ロービーム」はもう時代遅れ!? 最新の「ハイビーム」技術とは
     
   

2016年10月20日、警察庁は来年3月より「交通の方法に関する教則」に、「交通量の多い市街地を除き、ハイビームを使うべき」と明記する方針を固めたという報道がありました。「ハイビームは対向車の迷惑になるからなるべく使用しない」という認識を持っているドライバーにはなんとも違和感のある話ですが、実は技術の進歩により、まぶしくないハイビームが開発され、すでに実用段階まで達しているのです。今日はそんな最新のハイビーム事情についてレポートしましたので、お伝えいたします!

「え、ハイビームが基本なの!?」意外と知らない夜間のマナー

各社の取り組みの前に、まず基本のおさらいをしておきましょう。皆さんは夜間のライトをどのように使用しているでしょうか。

「ハイビームは対向車や歩行者がまぶしいだろうし、ちょっと使いづらい」という理由から、普段はロービームで走行している人も珍しくありません。しかし、道路交通法では「夜間の走行時はハイビームが基本」と定められています。

警察庁の調べによりますと、2015年、夜間に歩行者が車にはねられた死亡事故は625件で、このうち約96%にあたる527件が、「ロービーム」を使っていたことが分かりました。

ハイビームとロービームでは道路の見え方もまったく異なります。ハイビームが照らすことができる距離は約100メートルですが、ロービームは約40メートル。時速60キロで走った場合、ブレーキを踏んでから停止するまでの距離は約44メートルとされています。つまり、障害物に気付いてから慌ててブレーキを踏んでもよけられないということになるのです。

ただし、人が多い場所ではまぶしくて迷惑になるのもまた事実。対向車が常にいるような市街地ではロービームにするなど、こまめな切り替えが無難でしょう。

いちいち切り替えるのもめんどくさい! そんな声に応える最新ハイビーム技術とは?

ハイビームとロービームのこまめな切り替えが大事というのは分かっていても、いちいち切り替えるのはめんどくさいし、運転に集中もできない! そう思う方もいらっしゃるでしょう。ご安心ください! 実は各自動車メーカーも昨今の事情を受け、ヘッドライト回りの技術の進歩を図っています。さて、それでは一体どのような工夫がなされているのでしょうか。順番に見ていくことにしましょう。

マツダ ALH(アダプティブ LED ヘッドライト)

夜間でも昼間のように見やすい状況を作り出し、誰もがストレスなく安全に運転を楽しめることを理想に開発されたのが、マツダのALHです。ヘッドライトに4ブロックに分かれたLEDを採用し、それぞれのLEDを個別に点灯・消灯できるのが特徴で、主に3つの機能が用意されています。

・グレアフリーハイビーム

時速約40km/h以上で動作する機能で、ガラスに設置されたカメラにより対向車や先行車を検知し、特定ブロックのLEDを消灯することで対向車がいる部分だけハイビームの光量を抑えます。ハイビームを使用していても対向車がまぶしくないので、これなら気兼ねなくハイビームを使用できます。

technology_safety_active-safety_alh_2nd-row_img-ts-1511270201051100
photo by 公式サイト

・ワイド配光ロービーム

ヘッドライト外側に搭載されたワイド配光ロービームにより、通常のロービームでは死角となっていた部分まで照らし出し、交差点などでの安全性を高める機能です。イメージとしては、通常よりも左右に広く照らし出すロービームといったところです。こちらも時速約40km/h以上でのみ動作します。

technology_safety_active-safety_alh_3rd-row_img-ts-1511270201051400
photo by 公式サイト

・ハイウェイモード

こちらは時速約95km/h以上で動作します。機能はグレアフリーハイビームと同様で、光軸を上げることでより遠方を照らし出し、車間距離を長く保つ必要がある高速道路に適したモードとなっています。

technology_safety_active-safety_alh_4th-row_img-ts-1511270201051730
photo by 公式サイト

もちろんライトのオンオフは車側で自動的に行われます。2016年現在、同社のSUVCX-5に実装されていますが、40km/L以下では自動的にロービームになってしまい、多少融通が利かない面で不満の声が聞かれるようです。

アウディ:マトリクスLEDヘッドライト

1381734168561
photo by 公式サイト

アウディではA8の2014年モデルやアウディA4 の2016年モデルに実装されている、次世代型ヘッドライトがマトリクスLEDヘッドライトです。ヘッドライトに複数装備されたLEDライトを個別に制御し、対向車を避けるようにライトの照らし出す部分を制御するという部分はマツダのALHと同様です。制御はマツダとは異なり市街地エリアで30km/h以上、都市部では60km/hから動作します。

制御によってはヘッドライトに顔文字を映し出すことができる顔文字LEDヘッドライトとして宣伝されていますね。

・ナイトビジョンアシスタント

アウディのマトリクスLEDヘッドライトでは、オプションであるナイトビジョンアシスタントと連動することで前方にいる歩行者を検知し、LEDを3回点滅させることで警告を与えるというシステムが搭載されています。このときLEDライトは歩行者を照らし出し、ドライバーは歩行者を確認することができるのです。

・コーナリングライト

MMIナビゲーションプラスというアウディのカーナビゲーションシステムからの情報により、コーナー侵入前にLEDで曲がる方向にライトを向ける、コーナリングライトとしてヘッドライトが機能します。

BMW アダプティブLEDヘッドライト

cq5dam-resized-img-1185-large-time1447949002203
photo by 公式サイト

BMWでは、元々アダプティブヘッドライトというハイビーム時に対向車が来たときには自動的に光軸を下げる機能を持つヘッドライトが装備されていました。そこにLEDを採用したのがアダプティブLEDヘッドライトです。LEDはハロゲンなどよりも明るく、遠くを照らすのに適している、メンテナンスフリー、ライトを細かく制御できるなど、様々なメリットがあるためです。

・バリアブル ライト コントロール

走行中のステアリングの切れ角に応じてヘッドランプも追随するというシステムで、つまりコーナリングライトの役割を果たすシステムです。アウディのそれとは異なり、停車中でもステアリングを切るだけでライトの向きを任意に変更できるというのが特徴です。

走行中のステアリングの切れ角に応じてヘッドランプも追随するというシステムで、つまりコーナリングライトの役割を果たすシステムです。アウディのそれとは異なり、停車中でもステアリングを切るだけでライトの向きを任意に変更できるというのが特徴です。

・LEDライトによる斬新なデザイン

そんなLEDライトのメリットにデザインの自由度というものが上げられます。複数のLEDライトを自由に配列することができるので、それまでのライトに比べて自由度の高いデザインが可能となったのです。とりわけBMWではその利点を美味く取り入れており、自由度の高いヘッドライトデザインにより斬新なフロントマスクを生み出しています。

5シリーズ、6シリーズ、7シリーズ、X3 、X6、Mモデルなど、2016年現在多くのモデルで採用され、どんどん標準化が進んでいます。

トヨタ・レクサス アダプティブハイビームシステム

ahb_ahs_main_visualphoto by 公式サイト

トヨタおよびレクサスには元々オートマチックハイビームという周囲の状況によりハイビームとロービームを自動で切り替える機能を備えていましたが、LEDに登場によりアダプティブハイビームシステムが登場しました。機能は今まで紹介した各社の機能と同様に周囲の状況をカメラが検知し、LEDを個別に制御することで対向車や歩行者部分のライトを消灯させるというものです。

・インテリジェントAFS(アダプティブフロントライティングシステム)

コーナリング時にステアリングの舵角に応じてヘッドランプを動かし、コーナリング先を照らす機能、BMWと同様ですが、LEXUSでも採用されています。

レクサスではLSやRX、トヨタではクラウンマジェスタやクラウンアスリートといった上級車種に実装されています。

まとめ

LEDを複数も用いることで光軸を任意に調整し、照らしたい場所を照らし照らしたくない場所を照らさないというのが、2016年現在主流となりつつある技術です。今回紹介した技術はライトのオンオフやハイ・ローの変更まで全て車側で調整してしまうので、人間が任意に照らす場所を操作することはありません。今はまだ一部の高級車にしか搭載されていない技術ですが、近い内に多くの車で標準装備されると予測されています。アダプティブLEDライトが普及すれば、ハイビームやロービームの切り替えを、ドライバーが行うことは、ほとんどなくなるのではないでしょうか?

新車情報カテゴリの最新記事