今、中古車業界で最も注目されているジャンルのひとつに「ヤングタイマー」があります。
ヤングタイマーとは、登録初年度から15〜30年を経過したモデルを指し、いわゆるクラシックカーやヴィンテージカーと呼ばれる領域までには至らないクルマのこと。
そんなヤングタイマーなクルマの特徴は、何といってもクラシックカーなどに比べて部品の調達などが比較的容易な点。また当時は景気が良かったこともあり、個性の際立ったクルマが数多く輩出されているのも特筆すべきところです。
ここでは、特におすすめのヤングタイマーたちを挙げていきます。あの頃欲しかった、憧れたクルマたちが見つかるかもしれません。
武器はハイテク装備!三菱「ギャラン」
燃費偽装問題で世間を騒がせている三菱自動車ですが、かつては電子制御というハイテクノロジーで自動車業界を牽引していた時もありました。
特に1987年に発売された6代目はそれを象徴するクルマで、最上級グレードである「VR-4」には「ACTIVE4」と呼ばれる先進技術(4バルブ、4WD、4WS、4IS、4ABS)が搭載され、WRCをはじめとするラリーフィールドで活躍しました。
ランサーエボリューションシリーズの祖先ともいえる存在です。
堅牢な作りが走りを変えた、スバル「レガシィ」
発売前に10万km耐久走行を行い、国際記録を打ち立てたクルマが初代レガシィです。スバル・1000より脈々と受け継がれ、熟成された新設計の水平対向4気筒エンジン「EJ20」は220馬力を発生。こちらもギャランと同様、WRCなどで活躍しました。
WRC参戦当初は「ノーパワー、ノーエンジン」と呼ばれパワー不足に苦しみますが、優れたハンドリング性能を活かし、1993年には初優勝を飾ります。市販車においては、日本にワゴンブームを築いた功労者として知られています。
先進的なデザイン命!トヨタ「セリカ」
初代発売以来、何よりデザインコンシャスであったのがトヨタ・セリカです。中でも1985年に登場した4代目は「流面形」と呼ばれる、躍動感のある曲線と面で構成された特徴的なデザインが印象的でした。
この型からは4輪駆動モデル「GT-Four」も設定され、映画「私をスキーに連れてって」のカーアクションシーンが印象に残っている方も多いでしょう。
デフロック機構なども備わる本格的な4WD機構が特徴で、ラリーフィールドでも大活躍したクルマです。
世界で最も美しいサルーン、マツダ「ユーノス500」
バブル景気華やかりし頃、マツダは新たな販売チャンネルを構築しました。それが「ユーノス」です。そのユーノスのミドルクラスのセダンとしてデビューしたのが、500です。
マツダの「クロノス」シリーズをベースに「クルマと景観の融合」を目指し、当時マツダに在籍していたデザイナー荒川健氏によってデザインされました。
他のクロノス兄弟と違い、5ナンバーサイズでありながらも流麗なフォルムが印象的なクルマで、かのジョルジェット・ジウジアーロも舌を巻いたという話は有名です。
欧州仕込みのスポーツセダン、日産「プリメーラ」
photo by Kuha455405(CC BY-SA 3.0)
かつて日産は、フォルクスワーゲンのサンタナをノックダウン生産していました。ここで欧州車とは何であるか、走りの本質とは何かを徹底的に学ぶことになります。そうした研究の成果のもとに生み出されたクルマが、初代プリメーラです。
ノーマルでも硬い足周りに当時はクレームが殺到したといいますが、高速走行時にはしなやかなハンドリングを見せ、セッテイングが確かであったことを証明してみせました。初代は日欧のツーリングカーレースでも大活躍。販売も好調でした。
4ドアの皮を被ったセリカ!トヨタ「エクシヴ」
photo by Kuha455405(CC BY-SA 3.0)
スタイリッシュなピラーレスボディが特徴の初代は、コロナクーペの後継車として1989年にデビューしました。コロナクーペの系譜から分かる通り、その実態はセリカの4ドア版という位置づけでした。
その後、1993年にフルモデルチェンジ。ベースのセリカが3ナンバー化に踏み切ったことで、ボディは大幅に拡大されました。
これがモータースポーツの世界では功を奏し、1994年の全日本ツーリングカー選手権で華々しいデビューを飾ります。このスポーティなイメージが、エクシヴ最大の売りといえます。
ファミリーだけにはもったいない、ホンダ「アコード」
ホンダのグローバルカーとして有名なセダンが、アコードです。80〜90年代、アメリカで爆発的なヒット車となったのはご存知の通りです。
ヤングタイマー的におすすめのグレードは、5代目アコードセダンに設定されていた「SiR」。セダンでありながら、幅の広いトレッドにより安定したドライビングが楽しめます。MT車もラインナップされていましたので、通好みの方にはこちらを強くおすすめします。
このクルマも、90年代のツーリングカーレースで無敵の強さを誇った1台です。エクシヴ最大のライバルともいえます。
可愛い見た目だけじゃない!ルノー「トゥインゴ」
photo by Nacho(CC BY 2.0)
昨年、新型のトゥインゴが発表されましたが、トゥインゴといえば初代を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
発表当時はホンダ・トゥデイとのデザインの類似性が指摘されましたが、パトリック・ル・ケモン氏率いるルノー・デザインチームによるれっきとした社内デザインです。
クラッチレスの「イージー」や「クイックシフト5」なども輸入されていましたが、おすすめはMT車の「パック」。非力なエンジンを高回転まで思いっきり回して走ると、実用車とは思えない走りの痛快さが味わえます。
走りの本質を追求した、プジョー「106」
photo by Annie Roi(CC BY 2.0)
1991年に登場した、当時最も小さいプジョーが106です。104の後継車として発売されました。そのコンパクトなボディから、実用車としてのみならずモータースポーツ(特にラリー)にて活躍します。
日本では1995年より正規輸入が開始され、スポーツモデルである「XSi」や「S16」のみがラインナップされていました。
しかし輸入業者によって並行輸入された「ラリー」というモデルがあり、マニアの間で根強い人気を誇っています。特に1.3リッターの通称「テンサンラリー」は、現在でも高値で取引されています。
過去と決別した、ボルボ「850」
「従来のボルボとの共通点は、ほぼゼロ」とまで言われた、90年代の傑作車が850です。専用の直列5気筒エンジンを横置きに搭載し、前輪を駆動したこのボルボは、確かにこれまでのボルボの路線とは大きく異なるものでした。
当初はセダンのみでしたが、1993年にはステーションワゴンが追加されます。このステーションワゴンは日本国内でも大ヒットし、日産・ステージアなどのフォロワーを生み出します。
またイギリスではツーリングカーレースでも活躍し、ボルボのスポーツイメージを開拓することに成功しました。
どれも個性的で、魅力にあふれたクルマたち!
こうやって見ていくと、1台1台、各メーカーの考え方がそれぞれ違っていてとても面白いです。現代のクルマと比べてみると、合理性や燃費性能などでは遠く及びませんが、個性的でデザインコンシャスである点はヤングタイマーも負けてはいません。
最近ではこのジャンルもようやく認知され、ヒストリックカーイベントにも顔を出せるヤングタイマーが増えています。例えば純正パーツの情報交換のためにも、こういった場所は積極的に参加すると面白いかもしれません。
何はともあれ、このヤングタイマーたちは人生の幅を広げてくれそうなクルマであることに間違いはなさそうです。
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