【試乗レビュー】スズキの新型小型乗用車「イグニス」の実力はいかに

【試乗レビュー】スズキの新型小型乗用車「イグニス」の実力はいかに
     
   

photo by イグニス(IGNIS)

今までありそうでなかったスズキの国産Aセグメント・クロスオーバー「イグニス」。都心でも扱いやすいコンパクトなサイズに、キュートな見た目。しかしその実力は、なかなか侮れないものがありました。

新しいのにどこか懐かしい!こだわりのデザイン

2015年の東京モーターショーで参考出品され、今年2月より販売を開始したスズキのコンパクトカー「イグニス」。

そのコンセプトは「使い勝手の良いスタイリッシュなコンパクトクロスオーバー」。クロスオーバーとは、「オフロードの走行性能などでは本格的なSUVに一歩譲るけれど、軽量で乗り心地がよく燃費に優れた車」のことを指します。

エクステリアはシンプルながら骨太で、細かいところまでよく作りこまれています。まるでアルトのような個性的なライト周りのデザインも、イグニスの力強いデザインとうまく融合されています。

また、デザインの至るところにこれまでのスズキの名車のモチーフが散りばめられており、ファンの心を鷲掴みしそうなものになっています。

例えば、ヘッドライトは初代セルボ、フロントフェンダーにエスクード、A/Bピラーのブラックアウト塗装はスイフト、そしてCピラーの特徴的な擬似スリットはフロンテクーペなどが一台の車に違和感なく採用されています。

photo by wikipedia
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ボディサイズは全長3,700mm、全幅1,660mm、全高1,595mm。と、トヨタの「パッソ」とほぼ変わらないサイズですが、存在感はイグニスの方に軍配が上がります。

シャシーは同社のコンパクトワゴン「ソリオ」と共通の「Aプラットフォーム」が用いられています。車両重量はソリオが950kgに対して、イグニスは880kg。さらにソリオと比べて重心も低いため、走りにも期待が持てます。

気になるインテリアや乗り心地は・・・

乗り込んでみるとすぐに分かるのが、インテリアの質感の高さです。と言っても、特に豪華な表皮で室内が包み込まれているというわけではなく、どちらかといえばプラスチッキーな部類に入ります。しかし、色の使い方や素材の使い分けなどがとても上手くできており、チープな感じが全く伝わってこないのです。

エアコンなどのスイッチ類の操作感もしっかり伝わり、同じトグル形状のスイッチを持つBMWミニなどと比べても質感は遜色のないものです。メーター類の形状もシンプルで、読みやすいフォントや照明の適度な明るさは特筆すべき点です。

シートは適度に硬めで、フォルクスワーゲン「up!」などのドイツ車に近い感じです。サイドのサポートもしっかりしていますので、ワイディングロードなどで腰がブレることもなさそうです。運転席シートリフターも、廉価グレードを除き標準装備。シートポジションもばっちり決まります。

全高が高いわりにヘッドスペースが少ないですが、圧迫感を感じるほどではありません。必要最低限の高さは確保できています。ただそれはフロントシートでの話で、リアシートに座ると大人の男性では少し圧迫感があります。これは、Cピラーがかなり寝ているデザインになっているためと思われます。

軽量なボディが生み出す、軽快な走り

視認性についてですが、フロントの視界は良好です。ただ、リアサイドウィンドーが特徴的な形状をしていますので、後方視界は若干の慣れが必要です。

ラゲッジスペースは、標準的なサイズといえます。荷室の下にはサブトランクも設けられ、ちょっとした小物などを簡単に収めることができます。

メカニズムの方に目を向けると、イグニスは全車マイルドハイブリッドシステムを採用しています。マイルドハイブリッドとはエンジンと電気モーターを併用することで、二酸化炭素の排出を抑え、燃費を向上させるシステムのこと。これにより、イグニスは力強い加速と低燃費を実現しています。実際に数値として見ると、3.1PSのパワーと5.1kg・mのトルクを発生するモーターのアシストを得ることができます。

実際に走りだしてみると、軽量なボディをぐんぐんと引っ張っていく感じがします。短時間ではモーターのアシストをなかなか体感することはできませんでしたが、CVTとエンジンのマッチングが良く、実に軽快な走りをします。足周りは少し硬めで16インチタイヤの突き上げ感が若干気になるものの、コーナリングではしっかりと踏ん張り、路面をトレースしていきます。

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全体的な完成度としては、とても高い次元でバランスされている「イグニス」。価格も良心的で、上級グレードでも交渉次第でコミコミ200万円以下も楽に狙えます。

国内ではライバル不在ですが、輸入車ではフォルクスワーゲン「クロスup!」やフィアット「パンダ」といった同ジャンルの車種があるだけに、これらを競合させると上手く値引きが引き出せるでしょう。

どうしてもコンパクトというと、広さや質感など「まぁ、これでいっか」と諦めてしまいがちですが、イグニスだと「これがいい!」という気にさせてくれます。(リアサイド以外の)全方位、死角なし。それがスズキ「イグニス」です。

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