世界を代表する自動車メーカー「フォルクスワーゲン」。
ドイツに本社を置く世界有数の自動車企業グループで、2016年1月~6月期の自動車販売実績は2年連続で世界第1位を記録しています。このフォルクスワーゲングループは、今やアウディをはじめポルシェやランボルギーニ、日本では聞き慣れないセアトやシュコダまで名だたるメーカーを傘下に収める大企業グループ。今回は、そんなフォルクスワーゲングループの傘下に位置付ける各自動車メーカーのブランドにフォーカスし徹底調査していきたいと思います。
フォルクスワーゲン
第二次世界大戦前、ナチス政権による国策企業という形でフォルクスワーゲンは産声を上げました。フォルクスワーゲンとはドイツ語で「大衆車」を意味しています。高名な自動車設計者「フェルディナント・ポルシェ」が車両の開発に携わっていたことでも有名です。
フェルディナント・ポルシェ
photo by Bundesarchiv, Bild 183-2005-1017-525(CC-BY-SA 3.0)
戦後はイギリス軍の管理下で大衆車メーカーとしての道を進み、1970年代に入るとFF(前輪駆動)である「ゴルフ」がヒットとなりシェアは一気に拡大。
初代「ゴルフ」
photo by Sven Storbeck(CC BY 3.0)
1980年代にはチェコの「シュコダ」やスペインの「セアト」など外部の企業を次々に傘下に収め、世界トップの販売実績を誇る自動車企業グループへと成長していくことになります。
アウディ
フォルクスワーゲンの高級車ブランドとして近年存在感を強めるアウディですが、その始まりは第二次大戦よりも前、1910年にまでさかのぼります。第一次世界大戦・第二次世界大戦という荒波に揺られながらも、品質の良い高級自動車メーカーとしての道を歩んできたアウディ。1964年にフォルクスワーゲンの参加となってからは、乗用車用の4輪駆動システムである「クアトロ」で4WDの高級車ブランドというイメージを確立しました。
初代「クアトロ」
ちなみに「フォーシルバーリングス」と呼ばれるエンブレムは、アウディがフォルクスワーゲン傘下に入る以前に組んでいた自動車連合「アウトニオン」を構成する、4つの自動車メーカーの団結を象徴してデザインされたといわれています。
ポルシェ
photo by Wikipedia
フォルクスワーゲンとも関わりの深いフェルディナント・ポルシェにより、1930年にデザイン事務所として立ち上げられたのが自動車メーカー、ポルシェの始まりです。経営不振により2005年、歴史的にも関係の深いフォルクスワーゲンの傘下に加わり、パナメーラやマカンといったスポーツカー以外の車種も販売し、ラグジュアリーカーメーカーという立ち位置を年々強めています。
1963式ポルシェ「911」に乗るアレクサンダー・ポルシェ
photo by GAZOO
ランボルギーニ
日本でも2,000万円以上するランボルギーニ製トラクターの発売がアナウンスされ、一時話題となりました。ランボルギーニは元々トラクターの製造で成功を収めていたフェルッチオ・ランボルギーニが1962年に設立した企業。
フェルッチオ・ランボルギーニ
フィアットやクライスラーなど数々の自動車グループの傘下に入り、1度は倒産も経験しながら、1999年よりフォルクスワーゲングループの一員となりました。
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ブガッティ
photo by wikipedia
ブガッティは、1909年創業という伝統の高性能スポーツカーメーカーとして数々のモデルを世に送り出してきましたが、1995年に経営破綻してしまいます。その後商標権をフォルクスワーゲングループが獲得、1998年に100%出資子会社として現在のブガッティオートモビルが誕生しました。
1928年型のブガッティ・T43
ベントレー
photo by Idea Web Tools
元々ベントレーはル・マン24時間レースで5回の優勝を飾るなど、高性能スポーツカーメーカーとして誕生しました。1931年にライバルだったロールス・ロイスに買収され、スポーツカーの開発を禁じられたベントレーは高級車メーカーへの道を歩むことになります。その後、買収したロールス・ロイスが倒産しイギリス国有化となり、ベントレー部門のみ同国ヴィッカースに売却。そして1998年にはこのヴィッカース社がベントレー含むロールス・ロイスごとフォルクスワーゲンに売却と複雑な歴史を歩んでいます。それでもフォルクスワーゲン傘下後の2003年、ベントレーはアウディ協力の下ル・マン24時間レースに出場、総合優勝を果たしています。
ル・マン24時間レースを走った2003年型ベントレー
photo by SotY at en.wikipedia
シュコダ
photo by わちょほほほ
シュコダは、1907年に創業、第一次大戦後の特需により成長した、チェコスロバキア共和国の自動車メーカーです。社会主義政権が同国で樹立後、1948年に国有化が行われます。1989年に社会主義体制が転換、シュコダはフォルクスワーゲンの資本を受け入れ、グループ企業として新たなスタートを切ることになります。その後はゴルフをベース車に開発された「オクタビア」など多数車種を販売、1999年にはオクタビアWRCによりモータースポーツ活動も盛んに行っています。
初代「オクタビア」
セアト
1950年にスペインの国策自動車メーカーとしてフィアット出資の下誕生したセアトは、フィアットのライセンス生産を中心にスペインの大手自動車メーカーとして成長します。1980年にフィアットが撤収、1982年にフォルクスワーゲンと業務提携を結び、1993年にはグループ企業となっています。
ゴルフの姉妹車である「レオン・クプラ280」は2014年にルノー・メガーヌRSトロフィーが持っていたニュルブルクリンク北コースの最速ラップを更新、メガーヌRSやシビックタイプRと比較される1台です。
レオン・クプラ280
photo by corecars
傘下各社のブランドイメージを守るフォルクスワーゲン
錚々たる面子が揃うフォルクスワーゲングループですが、ベントレーやブガッティにおいてはフォルクスワーゲンの傘下後にモータースポーツに参戦させるなど、グループ傘下後も各企業が持つブランドイメージを壊さず、個性を最大限発揮できるような支援が目につきます。買収・傘下後も技術の提供は行いつつも、自分の色に染めるのではなく、ブランド各社の個性を引き出し強みを活かす戦略がVWグループ全体の好業績に繋がっていると言えそうです。
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