今月頭にマイナーチェンジを果たしたトヨタのミニバン3兄弟のノア、ヴォクシーそしてエスクァイア。ステップワゴンやセレナといった他車ライバルとの比較も重要ですが、その前にこれまで以上に個性が明確に別れたこの3兄弟の中で、どれを選ぶのかが悩みどころです。そこで、ノア、ヴォクシー、エスクァイアのベストチョイス、そして違いがどこにあるのか、なぜヴォクシーだけに人気が集中するのかも合わせて紹介します。
ミニバン3兄弟共通のマイナーチェンジ概要
今回のマイナーチェンジでは、エクステリアをそれぞれの個性をより際立たせたものへと変更しています。特にフロントフェイスでの変更点が大きく、Bi-Beam LEDヘッドランプと面発光のLEDクリアランスランプの採用や、フロントグリルのコンビネーションランプの新しいデザイインへの変更などにより、ヴォクシーはスポーティさを、ノアは精悍さを、エスクァイアは高級感をより高めた堂々としたスタイルへと進化しています。
インテリアでは、センターコンソールボックスや助手席シートバックテーブル、充電用USB端子など使い勝手の良い室内装備を充実させ、またスライドドアにシールを追加し遮音性を向上したほか、ボディ剛性の見直しやショックアブソーバーの改良により静粛性や乗り心地を向上させるなどの軽量を加えれています。
さらに、アクセルペダルを踏まずに定速走行できるクルーズコントロールの他、紫外線(UV)を約99%カットし、赤外線(IR)を効率よく遮断するウインドシールドガラスを全車標準装備。パワースライドドアを閉める途中にフロントドアハンドルのセンサーに触れると施錠予約ができる機能(スマートロック操作)も装備し、日常の利便性と快適性を向上させました。
ヴォクシーだけが人気の理由
かつては「ノア/ヴォクシー」と呼ばれていたのに、いつの間にか「ヴォクシー/ノア」という呼び方に変わっているのにお気づきでしょうか?
3兄弟で最も人気があり、月販目標台数もノアの2,700台、エスクァイアの2,300台に対して、ヴォクシーはその2車を合わせた台数、5,000台となっていることからも、その人気と期待度がうかがえます。
しかし、2001年11月発売の初代においては、月販目標台数がノアの5,500台に対して、ヴォクシーは4,500台と、合計台数は1万台と変わらないのですが、シリーズのベースモデルであるノアよりもネッツ店向けに設定されたヴォクシーの方が少なかったのです。
当然ながら一般的な呼び方も「ノア/ヴォクシー」でしたが、当時のメーカーのリリースを見ると「ヴォクシーならびにノアを発売」となっていたのが興味部会ところです。
その後 2007年6月の2代目ではヴォクシー5,000台、ノア5,000台と同数になり、2014年の3代目ではついにヴォクシー4,600台、ノア3,400台と逆転します。
そして今回のマイナーチェンジにおいては、エスクァイアと合わせてようやくヴォクシーと同数の台数を目標とされています。ここからも分かるように、実はヴォクシーの人気と実績が極端にいいのではなく、ノアが徐々に台数を落としてという事実があるのです。
なぜ3車種目のエスクァイアを導入したのか不思議に思うことがありましたが、ノアの落ち込みを穴埋めするためというのが答えのようです。
ヴォクシーの変更点
ヴォクシーは今回のマイナーチェンジにおいて、LEDの採用などで、特徴である2段積みのヘッドランプをよりシャープな印象にすることで、先進性とカッコよさを強調していますが、エクステリアは今までとイメージはさほど変わらず、3車の中では最も変化が少ないものとなっています。また、リアコンビネーションランプは、全幅のワイド感を強調するようにデザインを変更したことにより、新型として旧型との差別化が見て取れます。
ヴォクシーの人気の源であるフロントデザインに関しては、評判が良いのであまり変えたくなかったというのがメーカーの本音でしょうか。
その他、エアロ仕様のヴォクシー「ZS」ならびににおいては、[ハ]の字をテーマにしたスタイルとし、スポーティでアグレッシブなイメージを強化。また、切削光輝加工にダークグレーメタリック塗装を施した専用の16インチアルミホイール、ボディカラーには新規開発色のイナズマスパーキングブラックガラスフレークを、含む全7色を設定しています。
インテリアでは、天井までブラックで統一した室内にピアノブラック塗装とするなど質感を向上させ、専用内装色として、「ZS」には大人のスポーティ空間を演出するブラッドオレンジ&ブラックを設定させています。
ヴォクシーのベストチョイスグレード 「ZS」
エアロパーツを装着したZSのフロントマスクはヴォクシーならでは。さらに専用内装色のスブラッドオレンジ&ブラックとなれば気分が盛り上がるのは必至。
ノアの変更点
ノアのエクステリアは、艶やかで大きな面を感じさせるフロントグリルにより、モダンで精悍な印象を付与するなど、フロントまわりを中心に3車中で最も大幅な変更をされて、ヴォクシーと同様、バイビームLEDヘッドランプを装着したことで、バンパー周辺のデザインがメリハリを強め精悍さを一層強化しました。また、
Siに、新色が設定。その他グレードはフロントグリルがカラード+メッキモールになっています。
変更点は基本的にヴォクシーと共通ですが、もともとヴォクシーに対して大人し目の外観デザインで、内装にも明るい色合いの設定を用意するなど、ファミリーイメージが強かったので、現行型になってノアの外装デザインは存在感を強め、人気のあるヴォクシーにかなり近づいた印象になりました。
人気のあるデザインに変更するのは当然ですが、ヴォクシーとノアの差別化が小さくなり、販売店違いの同車種というだけになりつつあります。
インテリアでは、内装色は旧型のダークブルー&ブラックからブラックに、旧型のアイボリーはフロマージュ&ブラウンにそれぞれ変更。ブラック天井やピアノブラック塗装の採用などにより、室内の上質感を向上しました。
ノアのベストチョイスグレード
ノアはファミリーカーとしてのミニバンであることが使命。そうであればコストパフォーマンスに優れた2.0Lの「X」がよいでしょう。約55万円高いハイブリッドや、30万円近く高いひとつ上の「G」よりも、必要なオプションを選んで自分なりの「X」を作るほうがいいのです。
エスクァイアの変更点
エスクァイアのフロントフェイスは、フロントグリルの横幅を広げ、縦方向に配置されたメッキのバーは、中央部分を太くして、外側へ行くほど細くするなどアクセントを持たせた立体感のあるものに変更されています。
さらに、ヘッドランプの部分から下側のフォグランプまでをメッキされています。エスクァイアには、ヴォクシーZSとノアSiに相当するスポーティグレードが設定されず、標準ボディ自体が上級指向を表現するためにエスクァイアの顔立ちは個性が強くなっています。
エスクァイアだけの展開として、最上級のGiにはプレミアムパッケージを新設定されています。ヴォクシーやノアには採用されないキルティング加工を施したブランノーブと合成皮革の専用シート生地を使い、車内の装飾類もさらに上質になっています。
これは取り扱うトヨタ店とトヨペット店の顧客ニーズに合わせたもので、年齢層の高い両店舗のユーザーにはエアロパーツ装備のグレードより高級のある”プレミアムパッケージ”の方が好まれるためです。
新型ヴォクシーとその人気をあやかりたいノアの方向性が”ヴェルファイア”だとしたら、エスクァイアは”アルファード”にさらに近づく正反対の方向性と言えるでしょう。
エスクァイアのベストチョイスグレード
豪華さと高級感を求めてエスクァイアを円託したのなら、ハイブリッドでも2.0L車であっても、やはり新設定された”Giプレミアムパッケージ”を選びましょう。
ベースの「Gi」に対して10万円ほどのアップで、キルティング加工を施したブランノーブと合成皮革の専用シート生地や、進行方向を照らすLEDコーナリングランプ、後続車のライトの眩しさを抑える自動防眩インナーミラーなども採用されるなどかなりお得なグレードでもあります。
まとめ
今までの付き合いで、それぞれの店舗から買わざるを得ないという義理堅いユーザーが大半をしめるトヨタのミニバンですが、それ以外のいわゆる新規ユーザーにとってはいったいどれを選んだらいいのか迷う3兄弟体制。
そんなときはそれぞれの個性を最も表しているグレードをえらぶのがコツではないでしょうか。スポーティーなデザインが好みならヴォクシーの「ZS」、ファミリー優先ならノアの「X」、ゴージャスな雰囲気を求めるならエスクァイアの「Giプレミアムパッケージ」と決めれば、意外と簡単に結論が出そうです。そして選んだ車種を元に、ライバルの「セレナ」や「ステップワゴン」と比較することも忘れずに。
【関連項目】
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