80年代に次々と現れた「TURBO(ターボ)」。過給器であるターボチャージャーは、その圧倒的な加速力によって車好きを魅了しました。
現在では、エンジンの小排気量化(ダウンサイジング)において、欠かせないパワーユニットというように、立ち位置が昔とは異なりますが、その圧倒的な加速という持ち味は健在なのでしょうか?最近国産車にも増え始めたダウンサイジングされた直噴ターボ車を選んでみました。
なぜ直噴ターボが主流になるのか?
現在ガソリンエンジン車で主流になっている直噴エンジンは、インジェクターから、燃焼室全体に混合気が広がるように放射状に、燃料を噴射することで熱効率高めて燃費性能向上できます。
そして、直噴エンジンは、ターボチャージャーとも相性が良く、高負荷時に燃費が悪化するというターボのデメリットを解消しながら、ダウンサイジングされたエンジンにより低負荷時には燃費が向上するというメリットがあるのです。
国産直噴ターボ車
トヨタ・C-HR120T:ハイブリッドと比べられると不利
1.2L直噴ターボ車
エンジン | 直列4気筒1,196cc |
最高出力 | 85kW(116PS)/5,200~5,600rpm |
最大トルク | 185N・m(18.9kg・m)/4,000rpm |
JC08燃費 | 15.4km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
ハイブリッド車
エンジン | 直列4気筒1,797cc |
最高出力 | 72kW(98PS)/5,200rpm |
最大トルク | 142N・m(14.5kg・m)/3,600rpm |
JC08燃費 | 30.2km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
オーリス120Tにも採用された8NR-FTS型を採用。シングルスクロールターボチャージャーとバルブ開閉タイミングを制御するVVT-iを組み合わせ、さらに最適な燃焼効率を実現する燃料噴射システム「D-4T」を採用。レギュラーガソリン仕様であることが特徴。1,500rpmから4,000rpmの幅広い回転域で185N・mの最大トルクを生み出し、ハイブリッド車に比べてレスポンスや、加速フィーリングに優れています。
C-HRでは4WD専用モデルとなり、前輪駆動状態と4輪駆動状態を自動的に電子制御するダイナミックコントロール4WDと組み合わされています。1.8Lのハイブリッド車と併売されるために1.2Lのターボ車はやや非力なイメージが強く、燃費性能が半分以下ということもあり、ハイブリッド車に対しての利点が見つけつらい状況になっています。
ホンダ・シビック:グローバルカーならではの性能
ハッチバック
エンジン | 直列4気筒1,496cc |
最高出力 | 134kW(182PS)/5,500rpm |
最大トルク | 240N・m(24.5kg・m)/1,000~5,000rpm |
JC08燃費 | 18.0km/L |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
セダン
エンジン | 直列4気筒1,496cc |
最高出力 | 127kW(173PS)/5,500rpm |
最大トルク | 220N・m(24.5kg・m)/1,700~5,500rpm |
JC08燃費 | 19.4km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
「シビックで1.5Lのターボエンジンではダウンサイジングと言えるのか?」と思われそうですが、新しく発売されるシビックはC-HRよりも大きく、2.0Lから2.5Lクラスのボディサイズ。したがって立派なダウンサイジングと言えるのです。
燃焼効率の高い直噴システムに加え、高効率な過給を実現する吸排気デュアルVTCや電動ウェイストゲート付ターボチャージャーを採用。低回転から幅広い領域で2.4L自然吸気エンジンを凌ぐ高トルクと、高回転まで伸びやかなパワーフィールを獲得しています。
基本的にはジェイドと同じエンジンですが、チューニングがことなり、パワー、トルクともに向上させています。さらに、ハッチバックでは無鉛プレミアム仕様となることから、さらにパワーアップされています。
また、アクセル操作に対してリニアな加速Gを生むHonda独自の変速制御「G-Design Shift」によって、ターボラグを感じさせないパワフルな加速フィールを実現している点も注目されます。
トヨタの直噴ターボよりも排気量が大きいこともあって、よりスポーティーでパワフルなエンジンと言えます。
スズキ・エスクード:欧州基準をパワーユニットでも
1.4L直噴ターボ車
エンジン | 直列4気筒1,371cc |
最高出力 | 100kW(136PS)/5,500rpm |
最大トルク | 210N・m(21.4kg・m)/2,100~4,000rpm |
JC08燃費 | 16.8km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
1.6L車
エンジン | 直列4気筒1,586cc |
最高出力 | 86kW(117PS)/6,000rpm |
最大トルク | 151N・m(15.4kg・m)/4,400rpm |
JC08燃費 | 17.4km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
一部改良とともに導入されたのが燃費とパワーを両立する1.4Lの直噴ターボです。6つの噴射口を持つマルチホールインジェクターを横一列にレイアウトした、サイドインジェクションタイプを採用した、1.4L直噴ターボのブースタージェット エンジン(無鉛レギュラーガソリン対応)を搭載。2.0L自然吸気エンジン並みの高出力・高トルクを実現し、扱いやすく優れた性能を発揮させます。
これまで1.6Lの自然吸気エンジンだけのラインナップでしたが、1.4L直噴ターボは明らかにパワフルであり、魅力が増しています。
ダイハツ・トール:これはミスチョイスか
1.0ターボ車
エンジン | 直列3気筒996cc |
最高出力 | 72kW(98PS)/6,000rpm |
最大トルク | 140N・m(14.3kg・m)/2,400~4,000rpm |
JC08燃費 | 21.8km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
1.0L車
エンジン | 直列3気筒996cc |
最高出力 | 51kW(69PS)/6,000rpm |
最大トルク | 92N・m(9.4kg・m)/4,400rpm |
JC08燃費 | 24.6km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
トヨタのタンク/ルーミー、スバルのジャスティにも採用されるダイハツ製の1.0Lターボエンジン。1KR-VET型は新開発の1.0Lターボエンジンで、1.3L~1.4Lエンジンに相当する72kW(98PS)の最大出力と、1.5Lエンジンに相当する140N・m(14.3kg・m)の最大トルクを2,400~4,000rpmの幅広い回転域で発揮。また、アクセル操作に対して優れたレスポンスをもたらすステアリングスイッチの操作で切替可能スポーツモードを装備しています。
ラインナップには自然吸気の1.0L車があり、さすがに力不足を感じる人のために1.3Lや1.5Lエンジンではなく、直噴ではないもののターボを設定したのが現代流。しかし、クルマのキャラクターから言ってもライバルのソリオのようにハイブリッドの方が正解とも言えます。
トヨタ・クラウンアスリート2.0T:唯一の成功例
クラウンアスリート2.0L直噴ターボ車
エンジン | 直列4気筒1,998cc |
最高出力 | 173kW(235PS)/5,200~5,800rpm |
最大トルク | 350N・m(35.7kg・m)/1,650~4,400rpm |
JC08燃費 | 13.4km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
クラウンロイヤル2.5L車
エンジン | V型6気筒2,499cc |
最高出力 | 149kW(203PS)/6,400rpm |
最大トルク | 243N・m(24.8kg・m)/4,800rpm |
JC08燃費 | 11.4km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
世界基準では主流になっていながらも、日本国内において、なかなかその魅力が浸透していないために販売面では成功していない直噴ダウンサイジングされたターボ車ですが、唯一の成功例がこのクラウンアスリートでしょう。
現行クラウンではハイブリッドに直列4気筒エンジンを採用。ついにクラウンも4気筒になったことで疑問視されましたが、ハイブリッドの余裕ある動力性能と低燃費でV6の3.5L以上の評価を得られました。
ツインスクロールターボチャージャーを採用した2.0L直噴ターボエンジンの8AR-FTS型を搭載したのはアスリートだけで、ロイヤルには採用されていません。よりスポーティーなアスリートに採用したことも販売戦略上の判断で、保守的なクラウンユーザーの中でもアスリートを選ぶ層は、「ターボ」という言葉に高性能というイメージがすんなり受け入れられるとしたものです。
さらに、パワーとトルク、そして燃費の全てがV6の2.5Lエンジン車を上回り、非常に分かりやすいのが成功した最大の要因です。
まとめ
ハイブリッド至上主義の日本市場においては、いくらダウンサイジングターボが世界では主流ですよと言っても理解されません。それだけ国内メーカーのハイブリッドが優秀だということでもあるのですが、レスポンスや加速のリニアなフィーリングには特有の欠点もあります。
選択肢としての直噴ターボも必要であることはメーカーも理解していても、台数が見込めない国内仕様に向けて新たに作るのは無理。そこで、海外仕様を持ち込むことが多くなり、現在販売される直噴ターボ車の多くは海外での販売比率の高い車種になっています。また、スズキやホンダのように海外の工場から輸入する車種もあります。
そのため、無鉛プレミアムガソリン仕様のままという車種もあり、国内のユーザーに向けたモデルでないことがより一層、販売面での伸びが期待できない状況になっているのです。
さらに、乗ればその良さが誰にでもわかるはずなのに、ハイブリッド車と同じ車種に設定されると、スペックを見ただけで候補から外されてしまう悲劇も起こっています。
いずれそう遠くない段階で、全てのクルマがEVになることがわかっている今、直噴ターボ車を味わう最後の機会なのかもしれません。
【関連項目】
今、流行のダウンサイジング・ターボエンジン。その魅力を徹底分析!