トヨタからの挑戦状! ルーミー/タンクはスズキの牙城を崩せるか?

トヨタからの挑戦状! ルーミー/タンクはスズキの牙城を崩せるか?
     
   

1LD-CAR!って何!? ルーミー/タンクのコンセプトを探ると、作りの意味が分かる

トヨタから新たに最小サイズトールワゴン「ルーミー」と「タンク」が発売されました。(妹車としてダイハツ トールも発売)

キーワードは『1LD-CAR!』。キッチン無しワンルーム? いえいえ、「LIVING×DRIVING」というサブタイトルがついていますので、意訳するなら「居住性と走行性能」といったところでしょうか。つまり、「1台で高い居住性と走行性能を兼ね備えた車ですよ」というメッセージのようです。

コンパクトサイズの車であれば、居住性はある程度我慢しなければならないとか、排気量が小さいから、走りに関しては妥協しなければならないというのが自然な考え方。でも、そんな概念を覆す車なら、ユーザーとしては大歓迎ですね。

では、果たして実際のルーミー/タンクは、コンセプト通りの車に仕上がっているのでしょうか? 1つずつ見ていきましょう。

ボディサイズは具体的にどれくらいのイメージ?

新型ルーミー/タンクのボディサイズは、全長:3,725㎜、全幅:1,670㎜、全高:1,735㎜という5ナンバー・トールサイズのスタイルです。

全長は、同じトヨタ車で表現するならヴィッツとパッソの中間と言えば、取り回しの良さがイメージできるのではないでしょうか。

全幅については、5ナンバーサイズ上限より2センチだけ余裕を持たせた設定としており、狭い道でのすれ違いや狭い車庫への駐車などの際に、取り回しの良さを発揮するサイズとなっています。

全高は、エスティマより低いものの、シエンタよりは高いサイズで、名前の通り豊かな室内空間が確保されていることがうかがえます。

車体寸法で見ると、これで本当に快適な居住性を確保できているの? と思うでしょう。このサイズでどれだけの居住性なのか、検証してみましょう。

名は体を表すのか?室内空間を検証!

ルーミーの室内は、幅:1,480㎜、長:2,180㎜、高:1,355㎜と、シエンタよりも幅で10㎜広く、高さは55㎜の差があります。長さに関しては、ルーミー/タンクは2列シートなのに対して、シエンタは3列シートのため、表記上はシエンタが355㎜長くなっています(最後列シートまでを計測する為)。

ルーミー/タンクの乗車定員は、2列シートの5名です。2列シートとすることで、シートをフルフラットにすることも可能になり、使い方の自由度が大きく拡大。また、荷室スペースを犠牲にする3列目シートが無いことで、想像以上の積載性を確保しています。

つまり、小さいボディなのに広い室内空間を実現している、コンセプト通りの作りになっているということです。

走りを諦めない動力性能はあるのか?エンジン性能を検証する

気になる動力性能ですが、基本となるのはヴィッツなどに搭載されている1,000cc3気筒DOHCという構成で、最高出力51kw[69ps]/6,000rpm、最大トルク92N・m[9.4kgf・m]/4,400rpmとなっています。

また、このエンジンをベースにターボを装着したモデルもあり、こちらは最高出力72kw[98ps]/6,000rpm、最大トルク140N・m[14.3kgf・m]/2,400〜4,000rpmとなっています。

ベースエンジンは、控えめな出力で、走りを期待するのは酷な話かもしれません。ユーザーが日常的に使う中で、動力性能の良し悪しを感じる瞬間は、停止状態からの加速でしょう。同じ排気量で、この発進時の加速感を得るには、気筒数を少なくする方法が有効です。これは、1気筒あたりの排気量が大きくなることでエンジンを回転させる力が強まるからです。

ルーミー/タンクは3気筒エンジンとすることで、アクセルを踏み込んだ瞬間のトルクの力強さを感じさせ、非力さを感じる事は少ないと思います。更に力強さを求める方は、約30馬力上乗せされるターボエンジンを選択することで、ストレスフリーな走行ができるでしょう。

燃費性能は、可変バルブタイミング機構やアイドリングストップ機構、電動パワーステアリング、CVTなどにより、ハイブリッド機構無しの車としては優秀な数値を公表しており、走行性能の面でも、コンセプト通りのキャラクターを持っていると言えます。

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我慢しなくて良いエクステリアデザイン

ルーミー/タンクは、ゴージャスなイメージのルーミーに対して、スポーティーなイメージのタンクという色分けで、一連のトヨタのミニバンラインナップの色分けに準ずる構成となっています。

ルーミー/タンクのエクステリアデザインに共通して言えるのは、トヨタ最小サイズのトールワゴンではありますが、確りとコストを掛けて、所有欲を満たす堂々とした存在感を持たせている点です。

コンパクトカーでもデザインを我慢しなくて良いのが、ルーミー/タンクの魅力です。

インテリアデザイン一つで居住性は広がる

インテリアは、ルーミー/タンクともに共通デザインを採用しています。

直線基調デザインのインパネ周りは、スピード/タコメーターをハンドル奥に配置するオーソドックスなデザインで、ダッシュボード上段の中心にマルチインフォメーション・ディスプレイを配置。ダッシュボード中段には最大9インチのナビが設置できるスペースとなり、その下にシフトレバーとエアコンのコントロールパネルと並ぶ、オーソドックスで馴染みやすいものです。

インパネデザインは、常に視野に入るものだけに、感覚的な開放感や閉塞感に密接に関係する重要なカギとなります。ルーミー/タンクのインパネは、横方向に直線を描くデザインとなっており、横方向の広さを演出する効果があります。

収納もよく考えられており、スマホ収納ケース兼ドリンクホルダーや、大型センターコンソールなどを装備し、手荷物をスッキリと収めることができます。

また、運転席と助手席の背面には後部座席用テーブル(ドリンクホルダー付き)も装備しており、快適に過ごせるように考えられています。

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ライバル車スズキ・ソリオとの比較から、ルーミー/タンクの居住性を探る

ルーミー/タンクのライバルは、やはりスズキ・ソリオになると思われます。ソリオはこのクラスのトールワゴンの草分け的存在で、現在は3代目。ルーミー/タンクとソリオのボディサイズ、室内寸法を比較すると、以下の様になります。

車両サイズ比較

  ルーミー ソリオ
全長 3,725mm 3,710mm
全幅 1,670mm 1,625mm
全高 1,735mm 1,745mm
室内長 2,180mm 2,515mm
室内幅 1,480mm 1,420mm
室内高 1,355mm 1,360mm

室内長については、大きな差が生じていますが、これはトヨタとスズキで測定位置の違いがあるために発生しているものです。トヨタはハンドル上端から後部座席ヘッドレストまで。スズキはダッシュボード前端から後部座席ヘッドレストまでとなっているので、測定位置を合わせれば、実質的な室内長はほぼ同等だと推測されます。

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室内幅に関しては、ボディ幅の違いが反映されてルーミー/タンクが45㎜広い設計となっていますので、この差は後部座席に3人着座した際に大きな差となるでしょう。

室内高さは互角で、両車ともに後部座席を畳むことで自転車なども積載可能です。シートアレンジは、ルーミー/タンクはフルフラット化が可能なので、車中泊をしながらのアクティブなレジャーなどでも快適な休憩が可能です。

1,000cc VS 1,200cc 勝負になるのか?エンジン性能を比較してみる

  排気量 気筒数 過給 最高出力
ルーミー 1,000cc 3 無し 51kw[69ps]/6,000rpm
ルーミー(ターボ) 1,000cc 3 ターボ 72kw[98ps]/6,000rpm
ソリオ 1,200cc 4 無し 67kw[91ps]/6,000rpm
  最高トルク 基礎自動車税 エコカー減税
ルーミー 92N・m[9.4kgf・m]/4,400rpm 29,500
ルーミー(ターボ) 140N・m[14.3kgf・m]/2,400~4,000rpm 29,500
ソリオ 118N・m[12.0kgf・m]/4,400rpm 34,500 取得税80%重量税75%

この排気量設定のメリットは、自動車税が安い点です。更に余裕のある出力を必要とする場合でも、ターボを選べば自動車税の優位性を保ちながら高出力を手に入れられます。出力としてはルーミー/タンクのNAエンジンが一番低い数値となっていますが、排気量から考えて当然のことで、必要充分な動力性能です。また、前にも記述した通り、ルーミー/タンクは発進時の瞬発力に優れた3気筒エンジンを採用している為、感覚的には不足感を感じることはないでしょう。

一方のソリオは、自動車税面では若干の負担増ですが、排気量があるために低速域から余裕のあるトルクを発生できます。また、4気筒エンジンのため、3気筒に比べて振動が少ないという快適性にもメリットを持っています。

ルーミー/タンクのエンジンは、日常使用時のストレスを感じさせない走りと同時に、経済性も兼ね備えた賢い車と言えます。

小さいエンジンで頑張ると、燃費性能は期待できない?

ソリオはハイブリッド車をラインナップしており、ルーミー/タンクと直接比較するのは難しいため、ソリオのガソリンモデルとの比較をしてみます。

ルーミー 24.6km/L
ルーミー(ターボ) 21.8km/L
ソリオ 24.8km/L

ルーミーはターボモデルでも良好な燃費性能を持っていることがわかります。NAモデルであれば、自動車税の安さと併せてランニングコストの低さを享受することが可能になります。ターボモデルでも22㎞/L近い燃費性能を持っており、経済性は充分に高いと言えます。

コンパクトカーだからこそ気になる! 安全性能を比較する

安全装備に関する比較は、以下の通りです。

  衝突回避ブレーキ(対車) 衝突回避ブレーキ(対人) 車線逸脱警報 ふらつき防止
ルーミー × ×
ソリオ
  誤発進防止(前進) 誤発進防止(後退) 先行車発進お知らせ 衝突警報(対車) 衝突警報(対歩行者)
ルーミー
ソリオ ×  ◯

いざという時の装備として、それぞれ特徴がありますが、どちらも運転のサポートとして考えると、最上級の装備を整えていると言えます。

安全装備上のルーミー/タンクの魅力は、後退時の誤発信防止機能が装備されている点です。誰しもが間違いは起こす可能性を持っている訳ですので、まさかの時の備えとして装備されている点は、大きな安心材料だと思います。

「走り」の性能は、動力性能だけではなく、安全性能も含めたものと考えるべきで、その意味でも、ルーミー/タンクは期待通りの車になっていると思います。

ルーミー/タンクは「買い」なのか?

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従来、1,000ccクラスのトールワゴンは、スズキが孤軍奮闘していましたが、トヨタ(ダイハツ)が満を持して新型車を投入してきました。

車両スペックを見ると、ソリオを良く研究し、トヨタ独自のアプローチ方法で開発された車だと言えます。

トヨタ独自のアプローチとは、

  • 排気量は極力小さくしてランニングコストを抑えること。
  • 大きすぎず小さすぎずのボディサイズ設定。
  • 限られた室内スペースで最大限の快適性を得られるシートアレンジ。
  • コンパクトカーでも、所有欲を満たすデザイン性。

という点でしょう。

コンパクトカーの燃費性能や走行性能、室内空間の作り方は、ユーザーにとって最も重要なポイントです。当然ながらこれまでもメーカーは手抜かりなく作ってきており、ユーザーから高い満足度を得てきました。しかし、デザイン面の所有欲では我慢しなければならないことが少なからずあったと思います。

ルーミー/タンクが画期的なのは、コンパクトカーであっても、所有欲を満たすデザイン性と質感を併せ持っているという点です。トヨタの大型~中型ミニバンで作り上げてきたデザインのテイストを反映させ、更に単なるイメージの連想効果だけでなく質感も伴うものとしたことは、このクラスに新しい魅力を生んだと思います。

これを契機に、スズキだけではなく、他社も新型車を投入してくるかもしれません。そうなれば、ユーザーにとっては車選びの選択肢はもっともっと広がります。

このクラスを活気付ける魅力と実力を持ったルーミー/タンクは、間違いなく「買い」の1台です。

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